2019年7月号

View Point

山内 宏太朗(やまのうち こうたろう)

清泉女学院大学学長
清泉女学院短期大学学長

昭和25年生まれ、東京出身。上智大学大学院卒業後、昭和59年 白百合女子大学文学部専任講師。平成19年 白百合女子大学学長。平成31年 清泉女学院大学学長・清泉女学院短期大学学長に就任。。

カトリックの精神に基づき
 コミュニティセンスを備えた女性を育て
  地域社会に輩出してまいります

 学長としての私のミッションは、本学建学の精神を実現し推し進めることにあります。そして、大学の今後を語るうえで、キーワードとなるのが「地域」です。カトリックの精神に基づき、女性教育に携わってきた経験をもって、地域に根ざし地域に貢献していきます。これまでの学部と同様に、新しくできた看護学部も、地域の皆様と大学とのインターフェースになればと願っています。

建学の精神を実現し、
さらに進めていく

── 清泉女学院大学・清泉女学院短期大学の学長に就任されての抱負をお聞かせください。

山内
 この大学と短期大学において私がなすべきことは、その建学の精神を実現し、さらに進めていくことにあります。
 学長という重責に就くことは、とても大きな決断が要ることであり、抱負というより、本当に私で良いのかという思いの方が強くありました。ですから、過日の本学の一年生に向けた学長講話の時にもこんな話をしたのです。
 「君たちは自分の将来のことや適性などについて悩みながらもこの大学を選び、自らコミットしてここにいます。私も何のために本学へ来るのか大いに悩みました。決定打となったのは、司祭であり、私の50年来の友人でもある人物の言葉でした。彼に学長就任について相談したところ、これまでの教育歴も含め、私の『すべてがこのためにあった』のだと言うのです。私には本学に赴くべき何らかのミッションがあるのではないか。それを感じたので、この責を担う決断と覚悟ができました」
 そのコミットを、もし抱負という言葉で表すとしたら、建学の精神をより進めるということになるかと思います。

 

清泉女学院にとっての
キーワード

── 清泉女学院大学と短期大学の今後についてどうお考えでしょうか。

山内
  そのことを考えるうえで基盤となるキーワードは「地域」です。前任校の白百合女子大学は東京ということもあり、大学を語るとき地域という言葉は多くは出てきませんでした。一方、長野では教育機関や企業、他のどんな組織も地域を抜きにその存在は語り得ず、皆さん地域をキーワードに活動されています。本学においても地域に根ざしていかに進むかが大きなテーマであり、さらに一歩踏み込み、地域のために私たちは何ができるかを問うています。5月に長野信用金庫さんと産学連携で地域経済の活性化を目指す協定を結んだのも、その考えに基づいてのことです。
 次にカトリック大学であることも、本学の大きな特徴です。長野市や長野県にとどまらず甲信越北陸地域全体で見ても、カトリック大学は本学だけです。カトリックの精神に基づいた大学を地域の中でどう特徴づけ、どう進むべきかについても常に考えています。教育機関は特定の宗教性を表に出すべきではないという方も世の中にいらっしゃいますが、私はそうは思いません。私たちが日本人として生まれてきたことを否定して生きられないように、カトリック大学として生まれてきた清泉女学院大学・短期大学は、カトリック大学としての道を進むべきだと考えています。カトリックに基づく建学の精神を常に意識しながら地域に貢献できる大学にしていきたいと考えています。
 もう一つの特徴は女子大学であることです。男性と女性との間には純然として違いがあります。男女共同参画社会においても、男女で能力や性質が異なっていれば、その役割や社会参画の仕方も違って当たり前です。その人らしい貢献のあり方を活かすお手伝いをするためにも、私たちは女子大学としての価値をこれまで以上に高め、意味を発信していきます。

 

コミュニティセンスを養う教育を

── カトリック大学であることは、地域貢献にどう関わってくるのでしょうか。

山内
 地域とはまず、物理的な地域あるいは行政単位としての地域ではなく、コミュニティという意味でご理解ください。カトリックの精神では、コミュニティ、寛容性、開放性、性善説を基本に置きます。また、本学の設立母体である聖心侍女修道会で最も大切にしているのは、サーバントつまり「人のためにあること」です。そもそもコミュニティは、構成員が同じ方向を向き共に助けること、MEN FOR OTHERSがそのあり方の基本ですね。そしてサーバントを抜きにコミュニティはありえません。つまりカトリック大学の教育の目的は、性善説に基づき学生の善なるものを拡大することにあり、彼らに良きサーバントとしてのコミュニティセンスを身につけてもらうことにあるのです。
 コミュニティセンスを身につけるには、まず他者に関心を持つことです。相手への関心なしにコミュニティは始まりません。人に対して関心を持つことをベースにしながら、自分たちがサーバントとしてコミュニティに何ができるか、私たちは常に問い続けるべきだと思うのです。
 本学では、4月には大学前のバス停で、通学してくる学生を教職員が迎えるあいさつ運動をしています。あいさつは、「私はあなたを見ていますよ、関心を持っていますよ」というサインです。相手に対してこちらからオープンになり、その存在に気付いていると知らせることで、初めてコミュニティの関係が成立します。教職員に突然あいさつされた学生は、戸惑いや照れや恥ずかしさを感じるかもしれません。しかし、学生たちも次第に自分なりの方法でリアクションし、コミュニティセンスを養っていきます。
 入学式では、学生に身につけてほしいこととして「3つのまなざし」を挙げました。「自分を知るためのまなざし」、「他者を大切にするまなざし」、「社会に貢献するまなざし」がそれです。あいさつ同様まなざしは、対象を前提とした方向を持ちます。そして自分を知り、人を大切にし、社会に貢献するには、思うだけではだめです。その実現のためには「訓練」が必要です。それを実現できる力を培うこと、それが教育の役割です。

 

長野駅東口キャンパスは大学と市民の
新しいインターフェース

── 新たに開設された看護学部について、どんな思いをお持ちでしょうか。

山内
 国家試験に合格すること以上に私が大切に思うのは、人に寄り添う力です。助ける立場にある人間は、助けられる立場にある人間の心の内面まで推し量ったケアをしてほしい。たとえばターミナルケアの現場では、病気を治す視点だけで患者に接していては足りません。これから自分が世の中から消滅すると想像したとき、その人の心を満たす死への恐れや信仰などへ思いを致し、ケアできる人材に育っていってほしいのです。
 学部開設にあたっては、地域の多くの方々からさまざまな形の援助をいただきましたことにあらためて感謝申し上げます。そのおかげで北信濃の玄関口にできた長野駅東口キャンパスのピラール館が、地域の皆様と私たちとの新しいインターフェースになればと願っています。大学への扉を大きく開けてお待ちしています。このキャンパスを接点に、これまで以上に地域の皆様との関わりが深まり広がりますよう、私たちも努めてまいります。

 

山内 宏太朗学長の横顔
趣味は音楽鑑賞で、クラシックを中心に最近はポップスもよく聴かれるとか。歩くことも好きで、里山歩きやハイキングを楽しまれる。


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