2018年12月号

View Point

清水 光朗(しみず みつろう)

カシヨ株式会社 代表取締役会長

 

昭和27年生まれ、長野市出身。日本大学卒業後、カシヨ株式会社入社。平成2年代表取締役社長、平成29年代表取締役会長に就任。

デジタル時代に情報を業とするには
  デジタル技術にどのように向き合った商品を
    生み出せるかが課題だと思います

 デジタルメディアは、その誕生以来急速に発展し、特に情報産業に携わる者は、それがもたらす世の中の変化と無縁ではいられなくなっています。新しい時代に踏み込んでいくためには、各企業がその変化に応じて業態を変え、あるいは仕事のやり方を変え、新しいものを生み出すことが必要です。情報文化部会は、そのきっかけとなる情報提供にこれからも努めていきます。

デジタルメディア時代を
生き抜くことが課題

── はじめに、長野商工会議所の情報文化部会長に就任されての抱負をお聞かせください。

清水
 情報文化部会は、大きく分けて3つの業種から構成されています。1つ目が放送・新聞関係、2つ目がプログラミング・システム関係、3つ目が印刷関係です。いずれの業種でも、世の中でメディアそのものが大きく変わろうとしている今、その変化と無縁ではいられません。さまざまな情報媒体が、インターネットに代表されるデジタルメディアに取って代わられ、デジタル技術抜きでは語れなくなろうとしています。3業種とも、その変化に応じて業態そのものをどう変えていけるかが、生き残りをかけた一番大きな課題ではないかと考えています。
 特に、新聞や放送といったマスコミ関係、そして印刷関係は、ただ普通にこれまで通りの仕事をしていては、生き残っていくことは難しいだろうと思います。パイそのものが小さくなり、さまざまな意味で競争が激しくなっているわけですから。
 自分たちの仕事をどう変えていくか、どういうものを商品として世に問うていくか、それを考えていくのは各々の企業です。商工会議所の役目は、そうした考え方の拠り所となる情報を提供していくことにあります。当部会としても、会員の皆さんが新しい時代へ踏み込んでいく道を探るきっかけとなるような情報の提供に努めていきます。
 これまでも年に1回、東日本電信電話㈱さんなどから多大なるご協力をいただきながら、視察研修という形で、新しいメディア技術を見たり体験したりする場を設けてきました。こうした技術が今後社会にどう受け入れられ、どう発展していくかについて、すべてを見渡せている人はごく一握りですし、日常の仕事に追われていると、個々の企業では私も含め、すべてを把握することはとてもできません。ただ、新しい技術の現状や方向性などを知っておかなければ、紙媒体・電波媒体を問わず、今後新しい分野あるいは新しい商品を開拓していくことが難しいことも事実です。ですから、当部会では、今後もこうした情報提供の場づくりに力を注いでいきます。

メディアとは何かを
問い直すことも必要

── 新しいメディアへの対応のほかに、業界にとっての課題はございますか。

清水
 細かいことを言えば、たくさん出てくると思うのですが、それは各企業さんの範疇に属することが多く、部会が首を突っ込むのは大それた話になってしまいます。やはり、デジタルメディアにどう対応し、どう取り組み、あるいはどう利用していくのか、そしてまた、デジタルにできないことを問題として考えること、対抗する何かを生み出すことが、今やらなければいけないことかと思います。1980年代半ばにデジタル革命が起こり始めて以来、その流れが加速することはあっても、止まったり逆行したりすることはないわけですから。
 とりわけ印刷業は、当部会の中でもデジタルメディアに直接的に脅かされている業種だと感じています。しかも、デジタル化で自分たちの仕事がどう変わるのか、掴みきれない企業さんも多くいらっしゃるのではないでしょうか。
 弊社について申し上げると、出版社さんでは学習参考書の仕事が多いですが、少子高齢化で出版部数が減る一方で、ペーパーレス化も進んでいます。もう1つ、金融関係でも、やはり電子化が進んでいます。こうした動きに対し、こちらも新しいことを提案していかないと、現在の取引を継続することは非常に難しくなっています。紙の広告やチラシが担ってきた役割がwebに取って代わられるのも、時代の流れの中である程度は仕方ありません。
 ただ、デジタル技術というのは電気の存在を前提としていますので、電気なしでも動くものなどを考えてみて、独自の技術なり商品なりサービスなりをつくっていくことも大切だと感じています。また、メディアとは何かを問い直すことも必要です。メディアとは、情報を伝えたい人と望んでいる相手をつなぐもので、例えばそれが伝票であっても、情報伝達の役割を果たせば立派なメディアです。どのようなメディアをどのように使うかが違うだけで、メディアとして根本を押さえておけば、十分やっていく道は出てくると信じています。

もっとも古く、
もっとも新しく

── カシヨ㈱さんは老舗企業として、常に変革を遂げてこられたかと思います。企業に変革を促すものとは何だとお考えですか。

清水
 私が老舗にしたわけではなく、先代や先々代がやってきたことですから、私からお話しするのはおこがましいですが、先代のやり方を見て参考になったことがあります。経営は経営者一人ですべてできるわけではありません。社内でいろいろな想いで働いている人たちのその想いを生かし、想いを行動に変えていくことが、会社が変わっていくうえで大きな力になったのだと思います。
 あくまで私どもは中小企業の範疇におりますので、限られた人材や資金力をいかに有効に活用するかが問われます。自分一人ですべてをこなすスーパーマンを目指したり、育てたりするよりも、会社の中で働いている人たちが、それぞれの能力を存分に発揮できる場にしていくことが必要です。先代は、社員をきつく縛ることはできるだけ避け、個々が仕事に向き合う想いを大切にし、大きな力にまとめあげていました。
 弊社は印刷会社ですので、印刷は非常に大事な商品ですが、今後自分たちの変化を促していくために、ただ印刷物を受注するだけではなく、印刷する前と印刷した後も含めた仕事を受注していける体制づくりが必要と考えています。例えば、イベントをするためのサポートシステムを提案するなど、お客さまの課題解決を点ではなく面でやっていければと思っています。
 弊社の社是は、「もっとも古く、もっとも新しく」です。これは、「故きを温ねて新しきを知る」と同じ意味ではなく、先代はよく「もっとも古くあるためには、もっとも新しいことを常に心がけなければいけない」と言っていました。古くあるため、歴史を積み重ねていくためには、その時代においてそれぞれがどれだけ新しい価値をつけることができるかが継続の鍵になります。
 新しいことをするためには、当然リスクも絡みます。10のことに取り組んだら、日の目を見るのは多くて3つくらいで、残りは駄目になってしまうことの方が多いわけです。資金にも限界があるので、できるだけリスクを避けながら、その3つをいかに見つけていくかが経営者の務めだと思います。まあ、その案配は非常に難しいわけですが。

 

清水 光朗さんの横顔
趣味は読書で、歴史物では塩野七生さんや陳舜臣さん、小説では船戸与一さんや馳星周さん、三浦しをんさんなど、幅広いジャンルを楽しまれる。


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