2018年11月号

View Point

丸山 肇(まるやま はじめ)

西宮神社 宮司

昭和36年生まれ。國學院大学文学部神道学科卒業後、西宮神社奉職、兼て北信ナショナル通信特機㈱入社。長野松下システム㈱退職後、西宮神社宮司就任。現在は長野県神社庁長野支部長を務める。

商工農業に携わる地域の皆さま方へ
 恵みをもたらし親しまれる
  「およべっさん」であり続けます

 長野市岩石町に御鎮座する西宮神社は、長野県内で最も古いえびすのお宮です。商売繁盛、開運招福、五穀豊穣の神様として崇敬されるえびす神を祀り、商業に限らず農業に携わる方からも広く信仰を集めてきました。今年で113回を数える長野えびす講煙火大会では、ご協賛される皆さま、ご観覧いただく皆さまにえびすさんの御利益があり、より豊かになられること、良き年を迎えられることを願っています。

長野県内で最も歴史ある
えびすのお宮

── 西宮神社はどのようなお宮さんなのか、まずご紹介いただけますか。

丸山
 当社は商売繁盛、開運招福、五穀豊穣の神様として崇敬されるえびす神を御祭神とし、「えびすさん」「およべっさん」と呼ばれて親しまれています。御鎮座は古く、皆さまご存知の正月「十日えびす」、福男選びで有名な兵庫県えびす宮総本社西宮神社より、寛文3(1663)年に勧請されたと伝わっています。はじめは小さな祠でお祀りされ、明治初期には社殿・神楽殿を武井神社の北側に造営しましたが、大正年間に現鎮座地に遷座されています。えびすのお宮としては長野県内で最も古く、関東一円でも2〜3番目くらいの歴史があります。
 御祭神の「えびす」さんですが、実は神名としては古事記・日本書紀に登場しません。日本の民俗的信仰の土着神で、その神格から古事記・日本書紀に記される蛭子神(兵庫県西宮神社)・事代主神(島根県美保神社)とされています。古代の人々は閉域な生活をしていたため、語義として自分たちの集落以外の異郷やそこで生活する人々を戎(えびす)と呼んでいました。しかし、えびすとの交流で自分たちの持っていないものが恵として入るようになったことで、えびすは幸をもたらすものと信じるようになったのです。ぜひ、皆さまには崇敬により福を寄せていただきたいと思います。
 時は下り、平安中期に摂津を中心に豊漁・航海安全の神様としてえびすの神を祀るようになると、えびすの神はやがて市場の守護神となり、小売りをする商店の神様として信仰され、室町時代の福神信仰の隆盛により七福神の筆頭として一般家庭でも祀られるようになりました。信仰が山間部にも伝わったのは江戸時代に入ってからで、人形浄瑠璃などの芸能を通じて神徳が伝えられ、田の神・山の神の信仰とえびすの神が習合して広く信仰されるようになったのです。「えびすさんは釣りして網せず」といわれ、これは自身の力量で一番良いものを得るということで、欲をかいて暴利な商売をしてはいけませんという御教えです。
 当社の信仰は、県下に崇敬講を組織する形態で、氏子区域を持ちません。前述の田の神信仰とあわせ、長野市内を中心に、小谷村・白馬村から辰野町・佐久市まで広く崇敬されており、えびす講祭(毎年11月18日から20日)・初えびす祭(毎年1月19日・20日)には福を求めて多くの方に参拝いただいています。寄神ですから、御神影(おすがた)・熊手守・御神札を受けてご自宅にえびすさんをお連れください。

 

花火は神様へ願いと感謝を
お届けするもの

── えびす講祭について教えていただけますか。

丸山
  初えびす祭とえびす講祭は、それぞれ春祭り、秋祭りに該当します。初えびす祭は健康や商売繁盛、五穀豊穣などを皆さまがそれぞれ祈願するお祭り、えびす講祭はこうした福がもたらされたことに感謝するお祭りです。農村部の民間伝承では、「二十日えびす」といって毎月20日はえびす様の縁日です。とりわけ正月20日はえびす様が出稼ぎに出る日、旧暦10月20日はえびす様が出稼ぎから戻り、多くの福がもたらされる日とされます。これがえびす社の祭典であり、11月はえびす様の御力がとても高まる月になります。
 西宮神社のえびす講祭には、県下より崇敬講の世話人が代参し、松本源之助社中(国無形民俗文化財)による江戸里神楽の奉納をして御祈祷祭を斎行しており、19日の宵えびすには福を求める大勢の参拝者で終夜賑わいます。
 これにあわせて、11月上旬から23日にかけて全市連合大売出しが行われます。11月は、農家が秋の実りを現金に換える時期であり、また冬支度が始まる時期でもあります。えびす講は、このサイクルにタイミングよく催されます。1年間消費を我慢してきた農家の方がえびす講でその年の恵みに感謝を捧げるとともに、長野のまちで買い物を楽しまれる。商家の方は、こうした皆さまを相手に薄利多売で商いをし、商売繁盛を神様に感謝する。こうしてえびすさんのお祭りにあわせて大売出しが行われるようになり、たいへんな賑わいを見せました。
 花火大会は、明治32(1899)年に長野市大煙火大会として始まりました。花火は神楽などと並ぶ神賑行事であり、天高く昇り広がることから、日本各地のお祭りでよく打ち上げられます。えびす講の花火も、一人ひとりが奉納者であり願主としてえびすさんの御神徳を称え、願いと感謝を込めて高く大きく上げ、神様に誠意をお届けする象徴とされます。また、日本で最初の花火大会といわれる両国花火大会が、飢饉や疫病などの災い除けとして始まったように、花火には地域や人々を祓うという意味もあります。さらに、えびす講を景気づけるという大きな役割も担っています。
 長野えびす講煙火大会ははじめ、柳町で行われており、次いで城山、雲上殿、西長野、そして現在の犀川河川敷へと場所を変えてきました。時代や場所が変わっても、一玉一玉に込められた願いが変わることはありません。

 

皆さまにえびすさんの御利益が
ありますように

── 今年のえびす講煙火大会への想いをお聞かせください。

丸山
 今年で113回目を迎えるということで、100回を超える花火大会はとても珍しく、諏訪湖の花火大会と並んで全国的にも有名になっています。これからも長く続けていっていただきたいと思います。
 北信地域は、長野県の中でもえびす講を盛大にやる地域で、11月上旬より飯山・中野・須坂・篠ノ井・松代などでイベントを添えて斎行されています。長野市では先ほども申し上げた通り、11月上旬から大売出しを行うなど、1ケ月近くにわたって行事が催されており、祭事の規模も最大です。23日のえびす講煙火大会は、長野市のえびす講の締めくくりであると同時に、北信地域のえびす講の締めくくりでもあります。
 今年も、ご協賛される皆さま、ご観覧いただく皆さまが、えびすさんの御利益をいただき豊かになられ、良き年を迎えられる花火であってほしいと願っています。
 最後になりますが、御鎮座の岩石町はかつて問屋街で商業流通の中心でした。当社は商業に携わる皆さまを通じ、一般の方にも広く崇敬されて歴史をつないでいます。平成26年には御鎮座350年を奉祝し、社殿を改修して「およべっさんの銭洗い」のえびす像を建立しました。参拝された皆さまが、洗われた「清め銭」で商売・生業に励んでいただき、豊かになられることを日々祈願しています。平成に入り、善光寺門前でそれぞれお祀りされていた七福の神々を「善光寺七福神」と銘打ち、長野駅から善行寺さんまでのルートを立ち上げたところ、地域の方はもちろん、長野を訪れる観光客の方にも大勢来ていただけるようになり、御朱印なども大変増えました。中心市街地を歩いて巡る1時間半のルートのため、地域活性化にもつながると信じています。これからも善光寺さんの門前にある七福神の一社として、商工農業に携わる方へ恵みをもたらし親しまれる「およべっさん」であり続けるよう御奉仕していきたいと思っています。

 

丸山 肇さんの横顔
史跡名所巡りが好きで案内板を見ると山の奥まで行くことがあります。少し前までは釣りに熱が入り、新潟方面にかなり行きました。えびすさんのお誘いなのか、狙いは真鯛・黒鯛でした。


2018年11月号 CONTENTS

View Point
丸山 肇氏 西宮神社 宮司
私のお店・私の会社
相澤農園/one 18 eights(ワンエイト)
人きらっとひかる
今号はお休みです
ページ: 1 2