2018年10月号

View Point

堀内 征治(ほりうち せいじ)

U-15長野プログラミングコンテスト実行委員会 実行委員長
国立長野高専名誉教授、NPO法人高専プロコン交流育成協会理事長

1945年生まれ。信州大学工学部卒業後、国立長野高専に奉職。同校副校長、長野県松本文化会館館長、長野市教育長を歴任。1989年、高専プロコンを提唱し創設。

プログラミング教育は
 子どもたちの創造性を育み
  時代を生き抜く力を与えます

 この秋の産業フェアin信州2018では、併催事業としてU︲15長野プログラミングコンテストが開催されます。グローバル化が進む中、次の時代の基盤となる能力を養うには、プログラミング教育を低年齢層から実施することが有効です。産学官が密に連携するなど、ユニークなスタイルで行う今回のコンテストは、ICT産業と日本の未来に一石を投じることになるでしょう。

産学官が密に連携した
希有なコンテスト

── 堀内先生は、U︲15長野プログラミングコンテスト実行委員会の実行委員長をお務めです。開催にあたりどのような想いでいらっしゃいますか。

堀内
 プログラミングコンテストは、以前からいろいろな形で行われていますが、U︲15で行われることは稀です。北村会頭と1月にお会いしたとき、この長野でU︲15をやろうというありがたいお話をいただきました。長野高専勤務時代に高専プログラミングコンテストを創設した頃から、これからの世の中で必要とされるのは何より創造性であるとの想いがありました。今回U︲15を、しかも、地元長野でできるのはたいへん嬉しいことです。
 社会的にも経済的にもグローバル化が進み、職業や産業の仕組みが大きく変わる時代に私たちはいます。ある説では、今後10〜20年間に今の職業の50%が無くなるといわれています。それは困ると嘆いても流れは変わりません。新しく生まれる職業に対応すべく、これからを生きる人たちは、論理的思考や構成力といった能力を身につけるべきです。プログラミングはこうした能力を養う上で格好の経験であり、できるだけ低年齢層から始めることが重要になります。
 U︲15長野プログラミングコンテストには、3つの特色があります。1つ目は、大会を構成するメンバーの連携が密な点です。大会長である北村会頭を筆頭に、情報産業界、長野市や市教育委員会といった行政、信州大学、長野高専、長野工業高校などの教育界、この3者が対等の立場で参加し、協力し合っています。このことは全国的にもとても珍しいことです。
 2つ目は、小中学生を指導するのが、大学生や高専生、工業高校生である点です。こうしたコンテストは、とかく大人が上から指導することが多いので、これも非常にユニークなスタイルです。普段教えられている若者が教える立場を体験し、また教わる側は自分に非常に近い立場の人に教えてもらえます。これがとても良い効果を生んでいると思います。
 3つ目は、コンテストに参加する子どもたちに共通のPCを貸与した点です。パソコンを持っていない子どもや、プログラミングに初めて挑戦する子どもでも参加できます。これについては、北村会頭に多大なご尽力をいただき、㈱マウスコンピューターから長野市へ寄贈されたPCを私どもがお借りすることができました。ここでも、先ほど申し上げた連携が非常にうまくいっていると感じています。

創造性に必要な
論理的思考、構成力、想像力

── プログラミング教育は何に資するのか、具体的にご説明いただけますでしょうか。

堀内
 まず論理的思考、つまり身の回りに溢れる情報について因果関係を整理し、順序立てて考える能力を育成します。次に、プログラミングは構成力も育みます。ものを創るには、所与の道具をいかに組み立てるかを知らねばなりません。その点、一定のツールの組み合わせとそれがもたらす結果について学べるプログラミングは有効です。もう1つは想像力です。プログラミングとは、ときに無から有を生み、あるいは有と有を組み合わせて新しい有をつくる作業であり、世の中にない新しい何かを生むアイデア、想像力を育てる上でも重要になってきます。論理的思考、構成力、そして想像力、これら創造性にとって欠かせない能力は、たとえ子どもたちがプログラマーやIT技術者を目指さなくても、次の産業界の基盤となる力ですので、なるべく低年齢層から身につけた方が良いのです。
 今の子どもたちは、生まれたときから身近にPCもスマホもあるデジタルネイティブです。こうした機器を構成するプログラミングの基本を知っているか否かは、将来PCなどをただ使うだけの人になるか、新しい何かを創造する人になるか立場を分けると思います。都内の保護者層を対象にしたあるアンケートでは、子どもたちにさせたい習い事のトップが、ダントツでプログラミングでした。文部科学省でも、2020年より小学校においてプログラミング教育を必修とします。今回開催するコンテストは、いわば、それを先取りした形です。
 一方で、芸術や自然、スポーツなど、体験を通じて感性や情緒を養うことも重要です。結局は感性がないと、ものは形になっていきません。プログラミングによる訓練とともに、感性を育む体験もたくさんして欲しいと願っています。

子どもの力を引き出す場を
与えるのが大人の役割

── これからのICT(Information and Communication Technology)産業についてどのような想いをお持ちでしょうか。

堀内
 総務省の試算では、2025年にはGDPの10%以上をICT産業が支えるそうです。実際ここ20年間を振り返ってみても、ICT産業のGDPへの貢献度は、ほかのどの産業より早い伸び率で高まっています。今後その傾向はさらに加速するでしょう。私としてもICT産業の将来に相当期待しています。
 その理由は主に3つあります。まず、ICT産業は、勤勉さやきめ細かさ、新しいものを創ることへの意欲といった日本人の良さを出しやすい分野の1つです。次に、官民の連携、民民の連携が生まれやすいことが挙げられます。そして最後に、これは今盛んに議論されている働き方改革を促進し支えるのは、ICT産業の技術であるということです。裏を返せば、これら3つに重きを置いたICT産業の育成こそ、私たちの使命であると考えます。
 国もグローバル社会に対応するため、ICT産業の振興に力を注いでいます。ただ、その際に大きな問題となるのが、産業を支える人材の育成です。具体的には、グローバルな思考を持ってコミュニケーションができる人材が求められます。コミュニケーション力はこれまでも重視されてきましたが、ネットワーク社会においては、相手が見えない状況におけるコミュニケーションを含みます。これらに加え、再三申し上げてきた創造性を備えた人材がこれからのICT産業、ひいては日本の経済全体をつくっていくのです。
 日本人は、コツコツ改善を繰り返しながら、決められた通りのモノをつくることは得意でも、世の中の仕組みを変えてしまうようなアイデアや技術を生み出すことは不得手だと危惧する向きもあります。しかし、私は自分が教えてきた子どもたちに大いに期待しています。彼らは実に斬新な考え方を持っています。ただ、彼らはこれまでその能力を発揮できる場が少なく、また発揮するための社会的土壌に恵まれてきませんでした。U︲15長野プログラミングコンテストのように、官民が連携して彼らを応援する環境や仕組みづくりがもっとできたら、子どもたちの力を存分に引き出せるでしょう。日本のICT産業の未来はきっと明るいと信じています。

 

堀内 征治さんの横顔
小学校時代から合唱に親しみ、長野県合唱連盟会長はじめ文化芸術分野の公職を数多く務める。また、中学校へ赴き数学を教えるなど学習ボランティアにも取り組んでいる。


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