2018年6月号

View Point

安藤 国威(あんどう くにたけ)

公立大学法人長野県立大学理事長

昭和17年生まれ、愛知県出身。東京大学経済学部卒業後、昭和44年 ソニー株式会社入社。平成12年 同社代表取締役社長兼COO。平成19年 ソニー生命保険代表取締役会長。平成30年 公立大学法人長野県立大学理事長に就任。

グローバルな視点を持って
 地域に貢献できるリーダーを
  地元産業界とも連携しながら輩出します

 長野県立大学の建学の目的は、グローバルな視点を持って地域に貢献できるリーダーを輩出することです。これに特化したカリキュラム、スタッフ、システムを整え、本学では長野県の未来を拓くリーダーを本気になって育成します。
 地域企業の皆様には、ぜひ本学をご活用いただき、有能な若者にはどんどん活躍の場を与えていただくようお願いいたします。

長野県の未来を拓く
リーダーを育成

── 4月に開学を迎えられ、どのようなご心境でいらっしゃいますか。

安藤
 やはり学生が入ってくると、若々しい声が学内に響きます。コンパクト&コンビニエンスをコンセプトにしたこのキャンパスは、エントランスを中心に縦横につながりを持たせ、広々とした空間の各所に机や椅子、ホワイトボードなどを置いて、自然発生的なコミュニケーションを促しています。箱ができただけでは、「仏作って魂入れず」の言葉通りになってしまいますが、こうして無事開学し、交流の場が現実のものとなったことをうれしく思います。
 建築素材も素晴らしい教育環境づくりに貢献しています。三輪キャンパスも後町キャンパスも県産木材とガラスをふんだんに使いました。建物の中にいながら、信州の森にいるような空気を感じます。教室のドアや壁までガラスにしたおかげで緊張感を持って授業ができますし、どこへ行っても光が行き届く明るい雰囲気の中、伸び伸びと活発なコミュニケーションが図られています。
 この恵まれた環境において、建学の目的であるグローバルな視野を持って地域に貢献できるリーダーを輩出すべく、その目的に特化したカリキュラムやスタッフ、システムを用意しました。例えば、卒業時におけるTOEICの目標点数を定め、1年生から英語の特訓が始まります。2年生では海外留学が義務づけられています。また、団体の中での生き方を学ぶため、1年生は全員寮生活をしてもらいます。
 さらに、社会的課題に取り組む事業者や起業家を支援するソーシャル・イノベーション創出センターを学内に設けました。センター長には、この分野の専門家である大室悦賀・京都産業大学教授を迎え、地域社会と企業を結びつける役割、創業支援やコンサルティング人材の育成を担うと同時に、学生もその過程に関わらせます。そのほかに、地元企業へのインターンシップも積極的に進めますし、佐久間象山にちなんだ「象山学」の講義では、毎週県内企業のリーダーをお招きします。先日はその初回講義を私が務め、フロントランナーとしてイノベーションを起こすべく、自分の夢を育てることの大切さについて学生たちに話しました。
 こうして本学では、グローバルマネジメント学部においても健康発達学部においても、それぞれ明快な人材育成目標を持って、社会との交流も積極的に行いながら、未来を拓くリーダーたちを育成していきます。
 理念と実社会は違うとする向きもありますが、企業人として育ってきた私にとって、組織とは目的を達成するために存在するものであり、理念も実現するためにこそあります。本学では、学生たちが世の中に出て本当の意味で貢献するための準備をしっかり行います。それが結果として長野県の発展につながればと願っています。

地方の大学が頑張れば、
地方は元気になる

── 産学官の連携や学生の県内定着についてどうお考えですか。

安藤
 本学に関わる阿部守一知事、金田一真澄学長、そして私は、それぞれ産、学、官の世界で生きてきた人間です。この大学の成り立ちが、そもそも産学官連携の1つの形といえます。そして、三者で作り上げた理念に共感し、実績ある優秀な先生方に馳せ参じていただきました。この学び舎の門をくぐる学生は本当に幸せだと思います。
 一方、これまでは企業が求める人材と、大学が養成する人材にミスマッチがあったと私は思っています。例えば、海外でMBAを取得し日本の企業に就職する人は多いのに、日本の経営系大学院に進めば就職が有利になると考える学生や企業は少ない。日本の大学は、企業が求める人材を養成できていなかったのです。
 熾烈な国際競争に揉まれている企業は、目的意識がはっきりしていて、みずみずしい考えを持った若者を取り込む必要があります。近年イントラプレナー(企業内起業家)が注目されているのも、そうした人材を企業が求めているからです。企業が今までの延長線上にないビジネスを立ち上げる能力を持った人材を求めているなら、大学側はこうした人材をどんどん輩出しなければならない。
 これは首都圏の大企業に限ったことではありません。2014年10月に本学の学長と理事長の予定者に就任した金田一さんと私は、県内企業を数多く訪問し、トップの方たちにお目に掛かって、今企業がどんな人材を求めているのか、学生のインターンシップを受け入れてくれるのか、企業から本学に講師を派遣してくれるのかなどについて意見交換をしてきました。そこで感じたのは、長野県の企業も海外へ直接出ていく必要を認めており、グローバルな視点を持ってビジネスができる人材を求めているということでした。
 アメリカをはじめ海外では、大学のある街に人が集まり、新しい産業が生まれ、地域が活性化するのが普通のことになっています。日本でも地方の大学が頑張れば、次第に良い人材が集まり、地方は元気になるはずです。本学では、先ほど申し上げたソーシャル・イノベーション創出センターなども活用し、地域社会と地元企業の触媒役となって、長野県を成長させる人材を育てていきたいと考えています。
 一方、学生が東京などに出たまま戻らないのは、やはり地方に雇用がないからです。大企業の方が自分のやりたいことができて、自分の能力を発揮するチャンスがあると考える学生はそちらへ流れるでしょう。ただ、生活環境は地方の方が良いに決まっています。自然は豊かだし、通勤にストレスはないし、物価が安いから可処分所得も多くなるし、子育てもしやすい。問題は仕事です。自分を生かせる場があると思えるかどうかです。有能な若い人には活躍の場を与える必要があります。場が与えられれば、彼らはどんどん伸びます。それがイノベーションのための鍵です。
 企業の皆様には、ぜひ長野県立大学を活用していただきたいと思います。新しいビジネスの芽を育てるために、学生の若い力やアイデアを受け入れてみてください。学生は、既存のビジネスの既定路線に縛られない発想を持っています。商品やサービスの消費者・利用者として、忌憚のない意見が言えます。きっとお役に立てるはずです。一方、学生にとっては、長野県全体がキャンパスであり、学びの場です。学生時代に地元企業の仕事に関わらせていただいた経験が、卒業後ぜひこの会社で働きたいという思いにつながると信じます。
 ありがたいことに、すでに本学との連携に手を挙げ、学生のアイデアを頼りに新しい可能性を探ろうとしている企業もいらっしゃいます。これを励みとして、本学は地域社会のコア、知のハブとして、産学官連携のあり方に一石を投じる存在でありたいと願っています。

 

安藤 国威さんの横顔
余暇は家族と過ごす時間を大切にしており、年に2回ほど会員になっているハワイのゴルフ場で、奥様、お嬢様、その旦那様とプレーを楽しむ。


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