2016年10月号

View Point

市川 浩一郎(いちかわ こういちろう)

公益財団法人長野県テクノ財団理事長

不二越機械工業株式会社代表取締役社長

昭和15年生まれ。日本大学理工学部電気工学科卒業後、北辰計装株式会社に入社。昭和43年に不二越機械工業株式会社に入社し、昭和57年に代表取締役副社長、昭和61年より現職。
長野県人事委員会委員、長野商工会議所常議員、㈳長野県経営者協会副会長、長野県中小企業団体中央会長野支部顧問なども務める。

個々の企業がもつ技術資産を
産学官連携により有効に活用し
地域経済の活性化と自立を支援します

 製造業は長野県産業の大きな柱ですが、中小企業が多く、しかも下請け型企業が多いのが特徴です。こうした企業が、景気の波などによる受注変動に翻弄されることがないよう自立することが大切です。当財団では、産学官連携を主な手段として、それぞれの企業が持っている技術資産を効果的に活用し、各企業の自立、地域産業の高度化、新しい産業の創出、地域経済の活性化のお手伝いをしています。

技術革新による産業の高度化と
産業創出を促進

── 理事長をお務めの長野県テクノ財団とはどんな組織で、どんな事業をされているのですか。

市川
まず沿革からご説明しますと、1985年10月に国のテクノポリス法に基づき「財団法人浅間テクノポリス開発機構」が設立され、翌年10月に長野県独自の構想に基づく「長野県テクノハイランド開発機構」が設立されました。これら2つの財団を母体として、2001年4月1日に「財団法人長野県テクノ財団」が設立され、2012年4月には公益財団法人に移行し、現在に至っています。折しも今年度は、長野県テクノハイランド開発機構の設立から数えて30年目を迎え、記念事業を実施しているところです。
 財団の目的は、県内における地域産業資源を活用しつつ、産学官連携を主要な手段として、技術革新による地域産業の高度化と産業創出を促進し、もって地域経済の活性化と自立化に資することです。文部科学省の知的クラスター創成事業や地域イノベーション戦略支援プログラム、経済産業省の戦略的基盤技術高度化支援事業(通称サポイン事業)、JAPANブランド育成支援事業など、国のプロジェクトを積極的に活用しながら、コーディネータなど約40名の職員で事業を進めています。
 財団本部には、県が策定した「長野県ものづくり産業振興戦略プラン」に基づいて、 次世代産業・リーディング産業の創出を支援するために、長野県イノベーション推進本部を置き、その中に新事業企画室、ナノテク・国際連携センター、メディカル産業支援室の3チームを設置しています。
 また、当財団には、善光寺バレー、浅間テクノポリス、アルプスハイランド、諏訪テクノレイクサイド、伊那テクノバレーの5つの地域センターがあり、それぞれ地域の産業構造やニーズに基づいて事業を展開しています。

 

医療やナノテクなどの分野で
新事業創出を

── 長野県産業の将来の成長に向けて、具体的にどのような事業を行い、成果をあげていますか。

市川
 財団本部の新事業企画室では、新事業の創出の一つとして、発酵食品の宝庫である信州の資源を活かし、有用微生物の産業応用・事業化に向けた調査・研究開発を支援しています。この調査により、長野県内の老舗の味噌・醤油屋から有用物質を生成する発酵微生物が発見されました。現在、健康・医療分野などへの応用に向けた取り組みが加速しています。
 また、今年度県では長野県航空機産業振興ビジョンを策定しましたが、その支援機能の一端を担う機関として、コーディネート活動などの事業を進めています。
 メディカル産業支援室では、医療現場のニーズや医療機器販売などに関する情報・知見を持っている医療機器製造販売事業者団体や県内支援機関などと、県内ものづくり企業との展示・交流会を開催するなどして、メディカル機器分野における製品開発やビジネスのきっかけづくりを支援しています。例えば、急速な高齢化で増加している要介護者の自立支援を目的に信州大学と県内企業が進めているロボティックウェア「クララ」の産学官連携による開発に対し、制御の高速化技術を有する新たな企業のマッチングを支援した結果、ロボティックウェア実用化へと一歩近づく滑らかな動きの実現につながりました。
 ナノテク・国際連携センターでは、ナノテクノロジー・材料・加工分野における技術革新、人材育成や国際的技術連携支援、国際的産学官連携プロジェクトの創出などを推進していますが、ナノカーボン、有機無機ナノマテリアル、界面ナノテクノロジー、デバイスの試作・創出など、多様なナノ材料を対象とした基礎的研究と実用化に向けた研究開発を支援してきました。最近では、これからの技術、ビジネスに大きな可能性を秘めているSiC(シリコンカーバイド)パワーデバイス・モジュールの県内産業への技術適用の拡大および社会実装の促進を推進しています。

 国際連携関係では、EUからの資金援助を受け、ドイツ、オーストリア、スペイン、フランス、ポルトガル、イギリス、イタリアの7か国、8つの公的産業支援機関が構築した連合体のウィンテック(Wiintech)と、2014年1月に日本で初めてMOU(了解覚書)を締結しました。また本年1月には、ベトナム国家大学ホーチミン市校のIC設計開発研究教育センター(ICDREC)とMOUを締結し、国際的産学官連携プロジェクトの創出に期待しているところです。

 さらに、ナノテク・国際連携センターに設置するスーパー・エネルギー・デバイス・クラスター室では、文部科学省の関係機関の科学技術振興機構の事業である研究成果展開事業(通称スーパークラスタープログラム)の事業執行管理や県内テーマの研究開発を支援しています。

地域ごとに特色ある事業の

振興を支援

── 県内5つの地域センターの事業内容をそれぞれお聞かせください。

市川
 善光寺バレー地域センターは、長野市、須坂市、中野市、飯山市、千曲市などを範囲とし、事業運営は、当財団副理事長のオリオン機械㈱・太田社長にご担当いただいています。事業の一例を挙げますと、次世代の通信インフラの一つとして期待される可視光通信技術についての研究があります。現在、高齢者・身障者の生活支援システムや商店街、博物館、美術館などでの案内システムの開発などを進めています。
 浅間テクノポリス地域センターは、上田市、小諸市、佐久市、東御市などを範囲とし、副理事長の日置電機㈱・町田社長にご担当いただいています。こちらでは、2013年度から昨年までの3年間、経済産業省のサポイン事業を活用して、光ファイバーによる光波長測定装置用小型波長掃引源モジュールの開発をしています。交通インフラの経年劣化の監視などに利用するもので、現在試作機を作製したところです。
 アルプスハイランド地域センターは、松本市、大町市、塩尻市、安曇野市などを範囲とし、副理事長のキッセイコムテック㈱・神澤社長にご担当いただいています。経済産業省の関係機関である中小企業基盤整備機構のものづくり中小企業・小規模事業者連携支援事業を活用し、低エネルギーセンサーネットワーク研究会を開催し、県の工業技術総合センターとも連携しながら、さまざまな省エネ型センサーをネットワーク化し監視、分析するシステムについて研究しています。
 諏訪テクノレイクサイド地域センターは、岡谷市、諏訪市、茅野市などを範囲とし、副理事長の野村ユニソン㈱・野村社長にご担当いただいています。こちらでは、小さなものを小さな機械や工場で合理的に、短納期、低コストで多品種変種生産に対応できるDTF(デスクトップファクトリー)について研究し、同研究会は2000年11月の発足以来の活動を続け、現在国際的にも事業を展開しています。
 伊那テクノバレー地域センターは、飯田市、伊那市、駒ヶ根市などを範囲とし、副理事長の多摩川精機㈱・萩本副会長にご担当いただいています。今年度新規に飯田航空宇宙プロジェクトとの連携事業を立ち上げました。飯伊地域を中心とした航空宇宙産業集積への取り組みに対し、専任コーディネータが県や大学などと連携して支援しています。

市川 浩一郎さんのの横顔
幼少の頃から弦楽器に親しみ、少年時代はバイオリン、青年時代はウクレレを弾いた。今は、長唄の三味線をたしなみ、津軽三味線にも挑戦したいと語る。


ページ: 1 2 3