2016年8月号

人きらっとひかる

20年の節目に向けて
さらに質の高い「長野マラソン」へ

大西 健文さん
長野マラソン大会組織委員会
信濃毎日新聞社マラソン委員会
事務局長

 トップアスリートと市民ランナーが同時にスタートし、同じコースを走る「長野マラソン」。1万人を超える選手の参加、5時間の制限時間、3千500人ものボランティアによるサポートなど、数々の特徴が全国のマラソンランナーを魅了してやみません。第20回の節目を2年後に控え、大会事務局長の大西健文さんは、大会の質をより向上させていきたいと意欲を語ります。

強風の中でスタートした
第18回大会

 4月17日(日)、第18回長野マラソンが行われました。当日は雨に加え強風警報が発令され、ランナーにとっても大会運営側にとっても予想以上に厳しい条件となりました。倒壊や破損の危険があるスタート地点のアーチ設置を急遽中止。フィニッシュ会場に並ぶテントや看板を倒したり、補強したり、また給水ポイントをはじめとするコース沿道の強風対策を講じたりと、スタートの午前8時30分までの数時間で多くの作業がめまぐるしく行われ、無事、開催の運びとなりました。
 その判断をくだし、運営に携わる多くの人々が瞬時に連携できるよう指揮したのが、大会事務局長の大西健文さんです。
 「ランナーにとって雨や雪より厳しいのは、実は風なんです」
 過酷な条件に立ち向かう選手たちが競技に専念し、安全に走り切ることができるよう、運営側は最大限のサポートに奔走します。今回は終始向かい風に吹かれ続けながらの大会となり、タイムも、完走率も例年より低い結果となりました。しかし、事故や給水不足などの大きなトラブルはなく、市民の応援の声に包まれたあたたかな大会が実現。無事故を貫いてきた長野マラソンに、また新たな1ページが加わりました。
 「長野冬季オリンピック当時から携わっている関係者、ボランティアも多く、その精神を継承しながら、年々ノウハウをレベルアップさせ、今に至っているのです」。
 事務局長として大会全般に目を配っている大西さんは、競技の様子をリアルタイムで見ることはできません。しかし報道や記録映像に映る選手、ボランティア、そして沿道の市民の満面の笑顔に感動したと、目を細めます。

東日本大震災の直後
苦渋の決断と世の中へのメッセージ

当会議所などを中心に支援実行委員会も組織され、市街地にもあふれるほどの人々が応援に駆けつけた(写真提供:長野マラソン大会組織委員会事務局)
 2008年から事務局長として大会に携わっている大西さんにとって最も印象深いのは、東日本大震災から約1ヵ月後、中止の判断を余儀なくされた第13回大会だといいます。
 「直前の名古屋国際女子マラソン大会が中止となり、陸連から長野はぜひ開催してほしいとの要請がきていましたし、準備は着々と進んでいました。集めた参加料も運営のためにすでに支出した後です。なんとかやりたいという思いは強かったのです」。
 しかし、警察、消防の多くがすでに被災地に入り、大会当日の交通対策、救護が困難であることが大きなネックに。また、被災地への給水のため全国的な水不足が報じられるなか、選手への給水をできないとの声がボランティアから上がったことで、大西さんの覚悟は決まりました。
 「長野マラソンは安全・安心に運営することを最も重要な課題としています。その一角でも崩れたら、安全・安心は実現しません。今回は中止せざるを得ない、それが悩んだ末の結論でした」。
 中止に伴う対応は、開催する以上の苦労を伴いましたが、それを乗り切ったことで、新たなノウハウと、安全・安心な大会運営へのより強い信念が培われることとなったのです。

国内外からの注目大会
質の向上のための試行錯誤

3,500人ものボランティアや、沿道に途切れることなく続く応援の市民の存在も、長野マラソンを盛り上げている(写真提供:長野マラソン大会組織委員会事務局)
 長野マラソンでは、世界のトップアスリートと市民ランナーが同じコースを走ります。

また、5時間の制限時間を設けることにより、多くの市民ランナーがこの大会への出場を目標の一つにしています。残雪の北アルプスや桜、菜の花など春の信濃路を背景に走る楽しみも魅力の一つ。2年後に20回の節目を迎えるにあたり、3回連続3時間未満の完走者を表彰する「サブスリー」の企画も、今大会からスタートさせました。
 「自分たちで反省と工夫を重ね、より充実した質の高い大会にしていかなくては」と、大西さん。ランナーが満足できることはもちろん、ボランティア、応援市民も大きな喜びや感動を得られるハートフルな大会として、長野マラソンはさらなる進化を続けています。

 

事業所名 長野マラソン大会組織委員会 事務局
所 在 地 長野市箱清水1-3-8 長野市城山分室内 TEL 026-234-6380
URL http://www.naganomarathon.gr.jp/

【長野マラソン概要】1958(昭和33)年に信濃毎日新聞創刊85周年記念事業として始まった「信毎マラソン」を母体に、1999(平成11)年「長野オリンピック記念長野マラソン」としてスタート。長野冬季オリンピックの理念を引き継ぐ大会であると同時に、国内外のトップアスリートと市民ランナーが同じコースを走り、マラソン競技の底辺拡大を図る大会として注目される。今年4月に開催された第18回大会には1万人以上がエントリーし、8,052名が完走。
〈主催〉日本オリンピック委員会/日本陸上競技連盟/長野県/長野市/信濃毎日新聞社 〈共催〉NHK

 

大町市出身。信濃毎日新聞社で報道部記者、デスク、編集局次長兼運動部長を歴任し、2008(平成20)年の第10回大会より長野マラソン大会組織委員会の事務局長に就任。安全・安心な大会の実現を支えるとともに、参加者、ボランティア、応援する市民らがともに満足感を得られる大会の仕組みづくりと運営に尽力している。


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