2016年7月号

View Point

若麻績 信昭(わかおみ しんしょう)

善光寺寺務総長

昭和31年生まれ。大正大学卒業。浄願坊住職。事務局次長、法務局次長、法務局長と代表役員を歴任し、平成20〜21年善光寺寺務総長に就任。平成28年、2度目の善光寺寺務総長に就任。

 

行政や長野商工会議所とのつながりを強くし
 ディスティネーションキャンペーンも
  できる限りの協力をしていきます

 最近、善光寺には外国人旅行者が増えた一方、日本人参拝者で宿泊される方が減少したように思います。しかし、昨年の善光寺御開帳では北陸方面のお客様が増え、また今年は御柱祭や真田丸ブームで長野県に訪れ、善光寺にお参りされる人も多く、観光の広域化が進んでいます。来年はディスティネーションキャンペーンもありますので、長野商工会議所をはじめ地域との関係を強化していきます。

常ににおもてなしの心で
皆様をお迎えします

── はじめに、善光寺寺務総長になられての抱負をお聞かせください。

若麻績
今回2度目の寺務総長となりますが、前回は就任した年に北京オリンピックがあり、聖火リレーのスタート地点をご辞退するという出来事がありました。その翌年は善光寺御開帳でしたが、新型インフルエンザが流行した影響で衛生的な心配があったり、善光寺御開帳直前に秋葉原事件があったことで治安上の心配があったりして、対応に追われたことを思い出します。とにかく前回はいろいろと忙しい2年間でした。ですから、今回は無事で穏やかに過ごしたいと願っています。
 今回の善光寺御開帳では、前年の11月22日に神城断層地震があり、あれが万一昼間起きていたらと心配しました。参詣者に犠牲者が出ていたら、善光寺御開帳どころではなかったかもしれません。被災地の方にはお見舞い申し上げますが、あの地震が夜であったために、お寺の物的な被害だけで済んだことは幸いでした。
 無事開催できた善光寺御開帳は、思った以上に北陸新幹線の効果があったと感じています。富山や石川からお越しになったお客様が多かったです。夜のライトアップもたいへん素晴らしかったと思います。平成21年の善光寺御開帳では回向柱がたいへんな人気で、触るまでに2〜3時間お並びになられたようですが、今回は動きがスムーズだったようです。それでも過去最高の参詣者がありましたので、大成功だったのではないでしょうか。
 この任期中善光寺御開帳はございませんが、私どもにとっていちばん大切なことは、常におもてなしの心をもって、皆様をお迎えすることだと思っています。

 

インバウンドの増加と
観光の広域化

── 前回寺務総長をお務めのときと比べて、お感じになることはありますか。

若麻績
 まず、アジアをはじめ外国からお越しの方が増えたことです。冬季には、白馬などでスキーを楽しんだオーストラリアの皆さんが、善光寺へお参りしていかれます。インバウンドの増加に伴い、外国人旅行者に向けて、長野を訪れる海外の方を対象に外国語でボランティアガイドをしている「梵鐘の会」の皆さんにお願いして、案内をしていただいています。  欧米の皆さんの多くはキリスト教徒であり、アジアの皆さんもさまざまな信仰をお持ちです。信仰は違っても、皆さんは宗教というものを大切にしています。特に欧米の方は、本堂に入ると静かですね。幼いころから教会へ行くせいなのか、敬虔な場所での礼儀をわきまえていらっしゃるようです。また、宿坊に関心をお持ちの外国人も多く、お泊まりのお客様もたくさんいらっしゃいます。
 一方、日本のお客様は、お泊まりになる方が減少していると思います。高速交通網が整備されるなどして、長野に宿泊しなくてもお参りができるようになったからでしょうか。こうしたお客様へ対応するため、以前にはお朝事のときにしかできなかった回向を、午後もするようにしました。
 また、昔と比べて観光の広域化も進んだように思います。善光寺御開帳の翌年は、例年より参詣者が減少する傾向があるのですが、今年は御柱祭と合わせて善光寺をお参りする方も多くいらっしゃいます。また真田丸ブームで上田から長野へ回る方も数多くおいでです。

 

松代、戸隠とともに
世界遺産登録を

── 善光寺の世界遺産登録を目指す動きについては、何かお考えはおありですか。

若麻績
 世界遺産登録へ向けた活動は、10数年前から始まっています。まずは善光寺界隈を文化庁が指定する重要伝統的建造物群保存地区へ登録することを目指します。ここへ登録されると、世界遺産の候補となる確立も高くなるそうです。最近発表された日本遺産からは善光寺は惜しくも漏れ、残念な思いをしました。世界遺産登録へ向けた取り組みは今後も続けていきます。
 また、世界遺産登録に関しては、この辺りだけでなく、松代や戸隠も含めて考えることも必要かと考えています。現在、善光寺には天台宗と浄土宗しかありませんが、江戸中期までは真言宗と時宗があったそうです。このうち真言宗は戸隠に出て、戸隠三千坊といわれるほど大きな集団をつくりました。歴史上、戸隠と善光寺の関わり合いはたいへん深いのです。
 松代と善光寺との関係は、今話題の真田丸の時代から続きます。真田信繁(幸村)の兄・信之の妻となった小松姫は、本多忠勝の娘でしたが、徳川家康の養女となり信之に嫁ぎました。信之が松代藩へ移ったときには、小松姫が徳川家の娘ということで、かなり財産があったそうです。そこで、善光寺の本堂を建て直す折、松代藩が負担せよと幕府からお達しがありました。そのことがあって、善光寺御開帳の折には必ず松代から回向柱が寄進されています。おかげさまで松代の寄進建立会の皆さんとの交流もずっと続いています。

 

ディスティネーションキャンペーン
にも協力します

── 地域や経済界とのつながりについて、どうお考えになりますか。

若麻績
 宗教というのは、お寺の敷地内にとどまって完結するものではありません。行政や経済界の皆さんをはじめ多方面の方々とお話し合いを持ち、いろんなことで協力し合っていくべきです。善光寺にしましても、これまで長野県、長野市、長野商工会議所、JRなど多くの皆さんとのつながりを持たせていただくことで、さまざまな活動ができています。  過日も北村会頭はじめ長野商工会議所の方々と会合を持たせていただき、来年が本番となるディスティネーションキャンペーンについて話し合いました。前回のディスティネーションキャンペーンもちょうど私が寺務総長のときでした。吉永さゆりさんとツーショットの写真を撮れたことが最高の思い出になっています。それはさておき、今回のキャンペーンでも善光寺としてできる限りの協力をしていきます。また、7月の屋台巡行、8月の長野びんずる、冬の灯明まつりなどについても、これまで同様協力していきます。
 地域の皆さんとのつながりでは、今から10年ほど前、善光寺本堂再建300年を記念して、盆踊りを始めました。思った以上に大勢の方々に踊りに来ていただいており、うれしく思います。
 さて、世界ではいまだ平和を脅かす事件や出来事が絶えません。かつて9・11のテロ以降しばらくの間、善光寺に参拝される方が急に増えたことがありました。平和を旨とする仏教の考え方に共感される方が多いと感じています。これからも善光寺は、平和のメッセージを発信していきます。

若麻績 信昭さんの横顔
趣味は読書、音楽鑑賞、カラオケ。好きな作家は、池井戸潤、山崎豊子、北方謙三など。音楽の好みも、ロックからサザン、福山雅治まで幅広い。


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