2016年6月号

View Point

中島 恵理(なかじま えり)

長野県副知事

昭和47年生まれ。平成7年環境庁入庁。環境省地球環境局総務課課長補佐、経済産業省資源エネルギー庁省エネルギー・新エネルギー部新エネルギー対策課課長補佐、環境省水・大気環境局水環境課課長補佐、環境省総合環境政策局環境経済課環境教育推進室室長補佐、長野県環境部温暖化対策課長、環境省自然環境局総務課課長補佐、上智大学大学院地球環境学研究科准教授を歴任。平成27年4月より現職。

 

商工業の魅力を高める観点からも
  子育て支援やワークライフバランスの実現
    健康長寿社会づくりを推進します

 長野県では今、地域の中に子どもの居場所をつくる子育て支援、育児や介護と仕事の両立がしやすい職場環境の整備、健康長寿の推進などに力を入れています。こうしたプロジェクトは、商工業の魅力を高めることにもなりますので、民間の皆様のパワーや商工会議所のネットワークをぜひ発揮していただき、県と一緒に取り組んでいただけたらと思っています。

商店街を活用した
子どもの居場所づくり

── 中島副知事は、子育て支援、ワークライフバランスの推進、健康長寿プロジェクトなどさまざまな事業を担当されています。まず、子育て支援について、県の取り組みをご紹介いただけますか。

中島
いちばん最近の取り組みとして、子どもの貧困対策推進計画を3月に策定しました。昨年1年間、ひとり親家庭の実態調査や子どもの声アンケートを実施したところ、「学びたい」との意欲があるものの、学ぶためのお金が工面できず諦めてしまったり、ひとり親家庭ではそもそも養育機能が十分でなかったりするなど、長野県でも子どもの貧困が深刻であることが分かりました。
 計画では、家庭養育の支援、学びの支援、要支援家庭の孤立化防止などを重点的な取り組みとします。長立化防止などを重点的な取り組みとします。特に家庭養育の支援では、長野県の地域資源を活用した子どもの居場所づくりの推進を呼びかけています。子ども食堂に見られるように、地域の中で子どもが勉強したり食事したりできる、家庭外の居場所が求められています。そうした場所に、たとえば学生や高齢者の方がいらっしゃれば、学びや生きがいづくりのサロンのような存在にもなります。ひとつの場所に複数の機能や役割を持たせることで、子どもの居場所としてだけでなく、支援する側にも相乗効果が及ぶような場づくりを考えています。
 商業との絡みでも、カフェなどお店の一角や空き店舗を活用して、子どもの居場所の機能を持たせれば、そこに人が集い、お客さんも増えるかもしれません。商店街の活性化で課題となるのは、若い人をいかに引き込むかだと思います。商店街に子どもの居場所ができて、子どもやお母さんがやってくると、温かい社会づくりになりますし、地域経済の発展にもつながるのではないでしょうか。また、農地や自然の多い長野県では、森や里山、農地での居場所づくりも大いに可能性があります。こうしたことをぜひ様々な方々と一緒になって進めたいと思っています。

 

イクボス・温かボスが
商工業の魅力を高める

── 今いただいたお話にも関連しますが、ワークライフバランスへの関心も高まっています。

中島
 はい。これまでも県では、子育て支援に積極的な企業を増やすべく努めてきましたが、昨年度からは「職場いきいきアドバンスカンパニー」という仕組みを設けました。これは、仕事と家庭の両立ができる職場環境の改善や、雇用の安定を進めて従業員がいきいきと働き続けられるよう短時間社員制度を導入するなど、実践的な取り組みを行っている企業を県が認証する制度です。ま認証された企業は、県中小企業制度資金や商工中金における金利優遇、入札参加資格審査での優遇などのメリットが設けられています。
 もうひとつ、県連合婦人会が事務局となり、県が協力する取り組みとして、学「イクボス・温かボス(あったかボス)創出プロジェクト」があります。昨年度、阿部知事が参加する日本創生のための将来世代応援知事同盟でも、知事がイクボスになることの宣言がなされました。長野県では、連合婦人会のご提案でイクボスに独自に温かボスを加え、新たな形の「ケアの社会化」を目指しています。行政や企業、団体、教育機関などにおいて、子育てや介護に配慮し、仕事の両立ができる職場環境の整備を進める上司を「イクボス・温かボス」と定義し、男性も女性も安心して働くことができ、若い世代の結婚と出産、子育ての希望が実現できる信州型安心介護と子育ての社会づくりを推進するものです。
 このプロジェクトは、長野県商工会議所連合会にも呼びかけ人になっていただき、県内企業の経営者、事業者、管理職の皆さんにイクボス・温かボス宣言をしていただくようお願いしています。イクボスを全国に広めている安藤哲也さんによりますと、イクボス・温かボス宣言をした職場は、時間に制約のある社員がいることで、情報の共有化が進み、従業員個々のモチベーションとチームの生産性が向上するそうです。また、何でも相談できる風通しのいい職場になっていくと、従業員の企業に対するロイヤリティも高まります。プライベートにも配慮してくれる会社だと信頼できれば、定着率も自ずと高くなります。人手不足に悩む中小企業が多いなか、イクボス・温かボス宣言をした企業は、ワークライフバランスを重視する今の若者に大いにアピールできるでしょう。県としましても、商工業の魅力を高める観点からも、イクボス・温かボスを推進していきたいと思います。

 

世界一の健康長寿を目指して

── 健康長寿を目指す取り組みについて教えてください。

中島
 長野県の平均寿命は日本一で、つまりこれは世界一と言ってもいいのですが、一方、脳卒中の死亡率では全国平均を上回るなど、長野県はすべての分野で1位ではありません。そこで、世界一の健康長寿を目指そうと取り組んでいるのが、「信州ACEプロジェクト」です。ACEとは、Action=身体を動かす、Check=健診を受ける、Eat=健康に食べるを意味します。
 Actionについては、長野県発のインターバル速歩など、日ごろからできる運動を楽しんでいただくように、県では各地域にウォーキングロードを設定しました。Checkでは、家族全員が1年に一度健診を受けていただくよう促します。Eatについては、野菜の摂取量を増やし、塩分摂取量を1日9グラムに減らすことが目標です。
 特に食に関しては、外食やコンビニ、スーパーなどと協力して、塩分控えめで野菜たっぷりな「ACEメニュー・弁当」を提供いただくことにしています。長野商工会議所の会員になられている飲食店の皆様にも、ぜひACE食を出していただけるとうれしく思います。お気軽に県の方にご相談ください。
 また、このプロジェクトは、会社単位で取り組んでいただくことも重要です。経済産業省でも今、従業員の健康に配慮した環境づくりを進める企業を認証する仕組みを検討しており、今後健康経営の推進も、イクボス・温かボス宣言と同じように、企業の魅力を高めることになると思います。
 長野商工会議所さんとは、今から4年ほど前、温暖化対策課が実施したさわやか省エネ大作戦の折、善光寺門前で打ち水のイベントをご一緒しました。その後私は環境省に戻ってしまったのですが、長野商工会議所さんは、打ち水を継続していただき、他の地域の商工会議所にもこの取り組みを広めてくださいました。民間のパワーと、商工会議所のネットワークの素晴らしさを感じました。今日お話ししたプロジェクトにもぜひ長野商工会議所と連携させていただけると幸いです。

 

中島 恵理さんの横顔
住まいは富士見町で、農業を営むご主人、お子さんと暮らす。平日は庁舎のある長野市へ単身赴任の生活。京都生まれ。


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