2016年2月号

View Point

清原 実氏(きよはら まこと)

株式会社日本政策金融公庫長野支店 国民生活事業 事業統轄

昭和39年長野県山形村生まれ。北海道大学農学部農業経済学科卒業後、平成2年に農林漁業金融公庫入庫。全国の支店や本店、水産庁(出向)などの業務を経て平成27年4月より現職。

 

民間金融機関や行政
商工会議所との連携を強化し
地域に新しい産業の芽を育てます

 日本政策金融公庫(国民生活事業)は、創業支援などに取り組んできたノウハウを活かして、いま民間金融機関や商工会議所、行政、NPO法人などさまざまな皆様との関係強化に努めています。長野県は、農業と商工業との連携、各地に所在する大学の存在、首都圏とのアクセスや生活環境の良さなど、たくさんの強みをもっており、新しいビジネスが育つ可能性は大いにあると信じています。

創業支援で培った
ノウハウを活かして

── 日本政策金融公庫では、どんな事業をなさっているのでしょうか。

清原
 日本政策金融公庫は、平成20年10月、国民生活金融公庫、中小企業金融公庫、農林漁業金融公庫の業務を承継、設立され、現在は民間金融機関を補完する立場から、国民生活の向上や小規模事業者、中小企業及び農林漁業者の経営の発展に寄与することを目的に、旧公庫の役割を踏襲する形で、国民生活事業、中小企業事業、農林水産事業の3つに分かれて業務を行っています。自分が所属する国民生活事業は地域の商工業者の皆様の経営に必要な資金や創業者向けの資金あるいは事業再生の支援などお客様のライフステージにあわせた金融サービスを提供しています。
 最近では、東日本大震災を代表とする自然災害やリーマンショック後の低迷に対応するため、当公庫は経営の維持や復旧のためのセーフティネット機能を最大限働かせてきました。その後、政府や日銀による経済対策の効果もあり、公庫も活動の軸足を従来の量的な補完から質的なそれへと変えていく必要があるのだと思っております。
 そこで昨年の4月以降、県下の民間金融機関と「業務連携・協力に関する覚書」を締結させていただいております。民間金融機関の皆様に、公庫の役割や機能を知っていただき、対応しがたい分野・領域での業務において公庫の機能を有効に活用いただくという公庫の考えが金融機関の皆様にご理解いただけたのだと思っております。
 そのためには公庫内部でも3つの事業で情報共有・交換を密にしながら、事業各々が得意とする分野・役割を有機的に機能させていくことが大切と考えています。この長野支店には、私が担当している国民生活事業とともに、農林水産業者と国産の農畜産物を加工・流通している事業者向けに資金を提供している農林水産事業の窓口があります。また、松本支店には国民生活事業の資金では賄えない規模以上の中小企業者向けに資金を提供している中小企業事業の窓口があります。3つの事業が連携することで、事業者の6次産業化や海外展開、資本性ローンによる財務基盤の強化といった今まで単独では対応しがたかった金融サービスを様々なチャネルを通じて提供し得るものと思っております。
 いま地方創生へ向けて、全国で地方版総合戦略の策定が進んでおり、長野県内も同様です。その大きな課題である人口の問題に対処するには、何より地方に仕事をつくることです。国民生活事業が予てより取り組んできた創業支援の重要性は一層高まっており、県内の民間金融機関も県・市制度資金やプロパー資金によって積極的に創業者向けに支援をしています。そのような場面でも、これまで公庫が培ってきたものの見方、考え方を役立てていただけたらと思います。
 また、高齢者や子育ての対応、自然環境保護、過疎地活性化など社会的な問題の解決に取り組むNPO法人をはじめとするソーシャル・ビジネスも雇用の場として、大いに可能性があると思っています。昨年11月、公庫は長野県、商工会議所、商工会、NPO法人支援団体とともに、ソーシャル・ビジネスを支援するためのネットワーク「ソーシャルビジネスサポートながの」を構築し、この1月には「ソーシャル・ビジネスのいろは」と題したセミナーも開催しました。このような分野においても、資金を融資することで地域の雇用を生む芽として一定の役割を果たせるものと思っています。

 

農業資産や大学、
交通網など強みは多い

── 長野県の今の経済環境をどうご覧になられていますか。

清原
 個人的な印象になりますが、長野支店の管内は地域によって製造業中心のところとサービス業中心のところがあり、状況が違っていると思います。製造業が主体のところは、上向いてきたところに、中国経済のあおりを受け、踊り場にあるといった感じです。ただ、ユニークな技術を持ち元気のある小規模事業者・中小企業が所々に存在しています。
 また、長野市周辺や北信地域は、温泉やスキー場といった国内外からの観光客を対象とするサービス業が盛んです。小規模事業者を中心とした私どもの調査でも、この分野ではまだまだ景況判断で厳しい状況が続いています。飲食、旅館ホテル、物流といった業態では人手不足が顕著です。円安となり原材料費が下がらないなか、さらに人件費を上げて人を確保しようという心理になれないのかもしれません。この冬の雪不足の影響も気になるところです。
 自分がもともと専門としている農業について申し上げると、長野県は農業県ですから、商工業者も農業との関わりが欠かせませんし、そこを活かすことで長野県の良さもでてきます。昨年9月には、長野県や信州大学などが主催し、公庫も協賛した信州ベンチャービジネスコンテストが開催されましたが、何かしら農業に関わるビジネスを起そうとする者の参加が多くありました。製造や流通を専ら営んできた企業が農業分野に進出し、結果を出している事例も多々あります。長野県農業の今ある経営資源・資産をムダにすることなく活用する道は大いにあると思います。
 また、昨年4月から創業支援の融資に関わるようになって感じたのは、長野県にはUターンやIターンをしてビジネスを始める人が多いということです。県外や国外で見てきたものを、長野で起こそうという動きはとても面白いと感じています。
 大学が各地域に分散しているのもいいですね。そこから何かしら新しい発想が生まれ、いろいろな形でビジネスに役立っているように思います。
 大都市圏に近く、高速交通網が相応に発達している面も長野県の大きな強みです。人が往来できる環境を利用して、定住にだけこだわるのではなく、季節的に一定期間住んでもらうことに重きを置いた産業があってもいいと思います。加えて、自治体単位でなくもっと面的に広い範囲で考え、隣接する市町村や県単位だったり、全国組織とネットワークをつくったりすることも大切だと思います。日本政策金融公庫は全国組織ですのでお役に立てるよう努めてまいります。

 

「マル経融資」などを
ぜひご利用ください

── 最後になりましたが、長野商工会議所の会員に向けてメッセージをいただけますか。

清原
 商工会議所で経営指導を受けている小規模事業者の方が、経営改善に必要な資金を無担保・無保証人で利用できる「マル経融資」はとてもいい制度だと思っております。
 世の中には経営コンサルタントを仕事にする人は数多くいますが、商工会議所の経営指導員さんは親身になり、気軽に相談に乗っていただけます。これは事業者にとってとても大きなメリットです。しかも、商工会議所は広範囲にネットワークをお持ちで、必要に応じてその道のプロを紹介してくれます。先ほど農と商工連携についてお話ししましたが、個人的には農家の皆さんも商工会議所の経営指導員さんに相談すればいいと思うほどです。
 公庫も長野商工会議所さんとの連携をますます強化していきますので、会員の皆様にはより一層商工会議所を活用いただければと願っています。

 

清原 実さんの横顔
高校時代から山登りに親しみ、大学でも山岳部に所属。現在も山スキーを楽しむ。「長野は私にはパラダイスです」と話す。


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