2016年12月号

人きらっとひかる

自然ありきの人、人ありきの自然
共生の大切さを実感する毎日

梅田 実生子さん
環境省 長野自然環境事務所 戸隠自然保護官事務所 自然保護官

 平成27年3月、上信越高原国立公園から分離独立し、国内32番目の国立公園に指定された妙高戸隠連山国立公園。誕生からまだ1年半、その新しい公園の長野県側を管理するのが戸隠自然保護官事務所です。自然保護官の梅田実生子さんは入省2年でこの地に着任。試行錯誤の中で地元の人々との絆を深め、自然と地域の共生・協働のために奮闘しています。

新人レンジャーとして
誕生間もない新しい国立公園へ

国立公園に親しんでもらおうと開いた観察会や勉強会。梅田さんが語る自然の話に、興味深げに聞き入る子供たち
 豊かで美しい自然を求めて、国内はもとより海外からも大勢の観光客や登山者が訪れる長野県。現在、14カ所の自然公園があり、そのうち国が指定して国が管理する国立公園は5カ所、中で最も新しく指定されたのが妙高戸隠連山国立公園です。
 これら国立公園の自然を守り、活用するため最前線で活躍しているのが環境省の職員である自然保護官=レンジャー。梅田実生子さんは、平成27年に長野自然環境事務所の戸隠自然保護官事務所に着任し、新人レンジャーとしての第一歩を踏み出しました。
 徐々に増えてきたとはいえ、女性レンジャーはまだ全体の3割。自然が相手という以上に、全国転勤があることがネックになっているようですが、「研究室にこもっているより、実際に自然と関わる仕事がしたくて。故郷の福井と学生時代を過ごした京都しか知らないので、もっといろいろな地域を自分の目で見てみたかったんです」と、自然保護官を志した胸の内を明かしてくれました。

自然が相手の仕事でも
根底にあるのは人との信頼関係

 自然保護官とはその名の通り、自然を守るのが仕事。国立公園内の見回り、外来植物の駆除のほか、自然観察会などイベントを開催することもあります。一番の業務は、公園内に建物などを設置する際の審査・指導。自然公園法に基づいて、規模や色、デザインが風致・景観と調和するか、細かくアドバイスします。
 自然を相手にする仕事とはいえ、どの業務もさまざまな人の協力があってこそ。実際、妙高戸隠連山国立公園の長野県側では関連市町村である長野市・飯綱町・信濃町・小谷村、それぞれの協力を得て、公園の保全や整備が行われています。
 今、環境省が提唱しているのは、国立公園の協働型の維持管理。地元の市町村や地域住民、民間企業と一緒に国立公園を良くしようという取り組みです。
 飯綱町にある、むれ水芭蕉園ではガーリックマスタードという外来種の繁殖が懸念されていましたが、観光協会と協力して大半を駆除。また、飯綱高原にノルディックウォーキングコースを設置した際には、コースや標識の位置を地域の方と一緒に検討しました。このように飯綱町や長野市をはじめ各市町村に相談することも多く、梅田さんは人との信頼関係を築くことの重要さが身にしみたそうです。
 「自分一人の力でできることは小さくても、地元の人と良い関係をつくれれば大きな協力が得られる。それが、より良い自然環境をつくる基盤になるんです」と梅田さんは熱く語ります。

自然を守るだけでなく
自然を守ることで地域も豊かに

「危険箇所はないか」「補修は必要ないか」多くの人が利用する登山道の巡回や調査も自然保護官の大事な任務
 国立公園の中には北海道の知床のように手付かずの自然を誇るものもありますが、自然と人が共生するエリアも多数存在します。特に妙高戸隠連山国立公園や隣接地域は、人々の生活圏が山奥まで入り込んでいるうえ、平安時代から続く長い歴史があります。梅田さんは『人ありきの自然、自然ありきの人』だと実感することが多いそうです。
 「仕事に際しては自然を守ろうという意識より、この地域を良くしたいという思いの方が強いかもしれません」、「鳥獣対策や外来生物の駆除など国をあげての取り組みはもちろんですが、この地域で生活を営む人々にとって住みやすい環境が守られるかが自然保護官として最も気になるところ。良い自然環境であれば、それを目的とする観光も栄えて経済が潤い、地域全体の発展に繋がると考えます」と梅田さん。
 「個人的には仕事を続けながら結婚をして、子供も産みたい。子育てをするなら、やはり豊かな自然のある所が良いですよね」と最後は笑顔で一人の女性としての夢を語ってくれました。

 

事業所名 環境省 長野自然環境事務所 戸隠自然保護官事務所
業務内容 全国7ブロックにある地方環境事務所の出先機関として、現場で国立公園や自然環境保全地域などの管理に当たっているのが自然保護官事務所である。戸隠自然保護官事務所では妙高戸隠連山国立公園の長野県側、約18,000ヘクタールを管理している。工作物設置の際などに自然公園法に基づく許認可などの手続を扱うほか、公園内の巡視や調査、施設の整備、イベントの開催など、その活動は多岐にわたる。
所 在 地 長野市戸隠豊岡9794-167 TEL 026-254-3060

URL http://chubu.env.go.jp/nagano/

福井県出身。山好きな父親の影響を受けて幼い頃より山と自然に親しみ、高校卒業後は京都大学農学部に入学。森林科学科で有機化学の研究に勤しみ、大学院に進むも、「直接自然と関われる仕事がしたい!」と中退し、平成26年に環境省に入省。1年間の本省勤務を経て戸隠自然保護官事務所へ。現在は長野管内で唯一の女性の自然保護官として戸隠自然保護官事務所に勤務、地元の市町村や地域住民とも連携しつつさまざまな業務に取り組んでいる。


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