2016年11月号

View Point

太田 哲郎(おおた てつろう)

公益財団法人長野県中小企業振興センター理事長
オリオン機械株式会社代表取締役社長

昭和24年生まれ。東京電機大学精密機械工学科卒業後、英国ガスコイン社、松下電器産業株式会社(現パナソニック株式会社)勤務。昭和53年オリオン機械株式会社に入社し、平成3年より現職。 長野県職業能力開発協会会長、長野県経営者協会須高支部長、公益財団法人長野県テクノ財団副理事長、公益社団法人中央畜産会理事、須坂商工会議所副会頭なども務める。

国内外へのマーケティング支援をはじめ
 幅広く手厚い中小企業支援を
  ワンストップで実施しています

 (公財)長野県中小企業振興センターは、県内産業の振興・発展のため、中小企業が抱える経営課題への対応、創業・起業の相談、国内外への販路開拓支援から、企業再生や事業引き継ぎ支援に至るまで、幅広い中小企業支援活動をしています。コーディネーターなどの人材が質量ともに充実しており、手厚い支援活動がワンストップでできることも特徴です。ぜひお気軽にお問い合わせください。

県内中小企業を中核的に
支援する実戦部隊

── 理事長をお務めの中小企業振興センターでは、どんな事業をされているのですか。

太田
 長野県全県で、中小企業の経営の助言や相談業務をしています。県には産業労働部という部署がありますが、当センターはそこから委託や補助を受けて事業を行う実戦部隊とお考えください。
 当センターは、高度成長期の昭和46年3月に財団法人長野県中小企業設備貸与公社として設立されました。当初は、公社が最新の機械設備を購入し、中小企業へお貸しすることにより、資金調達力や担保力の弱い中小企業の体質強化や産業構造の高度化を図ることを目的としました。その後、時代の要請に応じて多様な事業を取り込みながら、公益財団法人長野県中小企業振興センターと名称を改め、県内中小企業の中核的な支援機関として歩んでいます。
 現在、県内産業の振興・発展のために、職員・専門家など80名を超える体制で、企業の取り組みを総合的にバックアップする業務を行っています。具体的には、中小企業が抱える経営課題に対するワンストップ体制での対応、創業・起業を目指す方への経営相談・助言、展示会の主催や専門展示会に長野県ブースを設けての販路開拓支援、海外での展示会や商談会の開催による海外展開支援、助成金による商品開発や事業展開などへの支援といった産業振興につながる事業を行っています。また、厳しい経営環境にある中小企業からの企業再生の相談や、経営者の高齢化や後継者不足に悩まれている企業の事業引き継ぎ支援も行っています。
 デフレの流れが20年ほど続くなか、地方経済は疲弊しています。当センターが取り組む事業のほとんどは、国や県の補助金事業や委託事業となっており、そうした資金を上手に活用しながらありとあらゆる方面から中小企業支援を行っています。

 

マーケティング支援センターの
役割

── 長野県の将来の成長に向けて、具体的にどのような実績、成果をあげておられますか。

太田
 長野県企業は、技術力は高いがマーケティング力が弱いと言われています。ビジネスとは、どれほど技術が優れていても、製品・商品が売れなければ評価はゼロです。製造業も含めどんな業種でも、自分たちの製品、サービスにお金を出してくれる人を見つけることがビジネスです。したがって、自社の製品、技術をお客様に正確に伝えること、お客様の声に耳を傾けて、そのニーズにあった研究開発をすることが求められます。ただ、特に製造業に携わる皆さんは、マーケティングに充てる人材が不足していることも事実です。
 そこで、当センターでは平成20年にマーケティング支援センターを設置して、県内中小企業のマーケティング力の強化を図ってきました。このようなセンター設置は他県にはなく、長野県の特徴だと考えています。
 マーケティング支援センターの取り組みは、生産財・消費財の販路開拓支援などが中心です。工業製品に使われる部品などの生産財の受発注開拓では、東京、名古屋、大阪に配置した3名の発注開拓推進員が現地で発注開拓を行っています。さらに国内での商談会や展示会も積極的に進めており、平成27年度は国内の展示会は4回開催し、164社・団体が出展しました。また、メーカーなど発注企業を訪問し、設計・開発・購買担当者に直接自社の新技術や新工法を提案する技術提案商談会は、昨年12 回開催し、165企業が参加しています。トヨタや日立でも開催したこの取り組みは、提案先企業の要望を十分に調査し、要望にあった企業を集めて技術提案を行うため大変な時間と労力が必要になりますが、県内企業が顧客の声を直接聞き、コスト競争力など自分たちの課題を探る機会として定着しています。
 加工食品などの消費財の国内における販路開拓では、昨年は大都市圏のバイヤーを対象に商談会を3回、展示会を2回開催しました。長野県産品への注目が高まっている中で、販路開拓する良い機会であるとともに、こちらも市場の目から自社商品を見るよい機会となっています。
 海外市場開拓も成約後のフォローアップも含め支援に努めています。今後の長野県産業にとって、海外市場は大いに期待できる市場です。昨年は、メキシコや東南アジア3カ国の展示会に出展するとともに、現地日系企業を対象とした技術提案商談会は、2カ国3社で開催しました。
 加工食品についても、食品分野のグローバル化が一層重要となり、海外では日本食ブームも起こっています。平成28年からは香港、シンガポールをはじめ海外展示会への出展支援、専門の推進員配置など、新たな取り組みを始めました。これからも「長寿世界一のNAGANOの食」の海外展開を支援します。多くの県内企業が有望なアジア新興国市場へ展開することを期待しています。

 

人材の充実と
長野県との連携が強み

── 他の同様な組織にはない中小企業振興センターの強みを教えてください。

太田
  人材でしょう。経営相談や創業・企業の相談にお答えするには幅広い分野の専門家が必要になります。当センターでは、コーディネーターなど支援人材が充実していることが強みになっています。80名を超えるスタッフのなかには、企業のOB人材や中小企業診断士、弁護士、社労士といった資格を有するコンサルタントがおり、ワンストップで対応できる体制になっています。
 特によろず支援拠点には17名のコーディネーターを配置し、企業からの相談に対応し、多岐にわたる経営課題にはプロジェクトを組んで解決にあたっています。その他、先ほどもお話ししたように、創業支援の推進員や海外展開を支援する推進員など多彩なスタッフによって相談や助言を行っています。
 県とは常に一体感をもって連携しています。現在当センターには、県からの派遣職員が4名在職しています。今後の支援人材育成においては、県職員も長野県中小企業振興センターで勉強していただくことで、その知識を県政で活かし活躍できる人材に育ってほしいと願っています。かつて県には「中小企業総合指導所」という組織がありましたが、知識と経験を備えた県職員が現場で活躍することは重要なことと考えます。当センターのスタッフや専門家と一緒に企業支援に携わり、企業目線で事業を考える経験は、県に戻っても役に立つはずです。
 さらに、
当センターのメンバーには銀行からの派遣職員もいますし、県内67の支援機関で構成する「ながの産業支援ネット」にも金融機関が入っているので、金融でお困りの企業の方に対しても方法論から一緒に考えることができます。読者をはじめ県内中小企業の皆様には、どんな相談事でも結構ですので、ぜひお気軽にお問い合わせください。当センターは本気で努力している中小企業を応援します。

太田 哲郎さんの横顔
オフは散歩する時間を大切にする。学生時代からバンド活動に熱心で、今も時折ライブハウスで演奏する。会社にも軽音楽部があり、練習スタジオも備える。


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