2016年1月号

View Point

加藤 久雄氏(かとう ひさお)

長野市長

 昭和17年、長野市生まれ。早稲田大学第一政治経済学部卒業後、昭和42年に株式会社本久入社。平成21年6月株式会社本久ホールディングス代表取締役会長兼社長に就任。平成19年11月より長野商工会議所会頭、長野県商工会議所連合会会長を務め、平成25年10月の長野市長選に出馬、当選し現在に至る。
 趣味はゴルフ、健康。好きな言葉は、「ピンチはチャンス」「自分の力は友達の力」。

北村 正博氏(きたむら まさひろ)

長野商工会議所会頭

 昭和22年、長野市生まれ。長野工業高等学校電気科卒業後、市内電子メーカーを経て、昭和45年に長野ソフトウェア・サービス株式会社を設立。昭和47年に社名を株式会社システムリース、平成2年に株式会社システックスとし現在に至る。平成25年11月より長野商工会議所会頭、長野県商工会議所連合会会長。平成26年には株式会社信州フードラボを設立。
 今も昔も仕事が趣味で、「知恵のない者は汗をかけ」が信条。

わがまちへの
自信と誇りを持って
前向きに魅力を発信する1年に

 2015年は、善光寺御開帳をはじめ、長野市がとても賑わった1年だった。その勢いに乗って、NHK大河ドラマ「真田丸」が放送される今年も、観光面では大いに期待される。
 一方、人口減少問題や商工業の振興など、長期的視点で継続的に取り組むべき課題もある。こうしたテーマについて、官と民がどう連携していくか、加藤長野市長と北村商工会議所会頭が語り合った。お二人がその鍵として挙げたのは、何より市民が「わがまち」への誇りと自信を持つことだった。

 

エポックメイキングな年だった
2015年

── 昨年1年を振り返り、加藤市長はどうお感じになられていますか。

加藤
 市長就任2年目の昨年は、光寺御開帳を迎えたエポックメイキングな年でした。北陸新幹線金沢延伸をチャンスとして、長野市を訪れたお客様に「また来たい」と思っていただけるように、市では1年前から新幹線・御開帳プロジェクトを立ち上げ、準備を進めてまいりました。
 結果として過去最高の707万人の人がお見えになり、セントラルスクゥエアやTOiGOなど表参道沿いの広場は、開催期間中毎日が縁日のような賑わいでした。一連のイベントには、中心市街地以外の地域も含め約1万5千人の皆さんが出演され、伝統芸能などをご披露いただきました。また、およそ300人のボランティアの皆さんにはいろんな場面で活動いただきました。そうした意味で、今回の善光寺御開帳は市全体のお祭りとして、長野オリンピック以来の盛り上がりをみせたと思っています。
 また、北陸新幹線延伸にともない、長野駅も装い新たに生まれ変わりました。併せて整備された駅前広場とともに、長野駅が市の魅力を代表する大きな顔となったことも喜ばしいことでした。
 3月8日には、南長野運動公園総合球技場もオープンし、日本でも有数のスタジアムとして高い評価をいただきました。ここを本拠地とするAC長野パルセイロは、トップチームは惜しくもJ2昇格を逃したものの、レディースは念願の1部昇格を果たしました。今後もこの球技場を軸として、スポーツを通じたまちづくりも進んでいきます。市でも教育委員会から文化スポーツ部を切り離し、スポーツ振興により力を入れる体制を整えました。
 中山間地プロジェクトにも取り組んできました。特に鹿をはじめとする鳥獣被害に対応するため、従来2つの課にまたがっていた事業を、「いのしか対策課」で一本化しました。同課では、有害鳥獣の捕獲、ジビエ料理への活用に至るまでの一連の支援をしています。
 もうひとつ、一昨年新設した「こども未来部」では、0歳から18歳まで、お子さんに関する相談なら何でもお受けしています。子育て世代をはじめ市民の皆様の安心につながっていると感じています。

 

野の意気を全国に示した
長野えびす講煙火大会

── 北村会頭は昨年1年どんな事業に力を注いでこられましたか。

北村
市長がまさにおっしゃったとおり、南長野運動公園総合球技場のリニューアル、北陸新幹線延伸、善光寺御開帳などたいへんイベントの多い年でした。とりわけ、私は一昨年の会頭就任と同時に善光寺御開帳奉賛会を設立し、以来昨年の前半まで御開帳一色で取り組んできました。
 今回奉賛会では、より多くの皆様に善光寺へ御参拝いただこうと、プレスリリースも7月8日早々に行い、大手旅行会社へもトップセールスで積極的なPR活動を展開しました。遠くは札幌、福岡、また北陸新幹線の利用も睨んで、石川、富山、新潟にも情報を発信し、まずは長野へ来ていただくことを心掛けました。
 御開帳期間中の長野市では、市長が立ち上げられたウェルカム長野実行委員会が中心になり、日本一の門前町大縁日が繰り広げられました。実際長野へお越しのお客様も「来てよかった。見てよかった」とお感じになり、その話を聞いたお知り合いもまた長野にいらしてくださいました。
 伝統を受け継ぎながらも、御開帳では回向柱のライトアップなど、新しい試みにも挑戦しました。同様に他の継続事業も、慣例に従うだけでなく必要な見直しを行ってきました。たとえば青年会議所が中心になって開催する長野灯明まつりや長野びんずるについても、皆さんに楽しんでいただけるような工夫を凝らしてきました。
 そして昨年1年の〆のイベントとなった11月23日の長野えびす講煙火大会では、前年の25%アップの1万5千発の花火を打ち上げることができました。心配した天候にも恵まれ、今回は今までにないほど「よかった。すごかった」という声を頂戴しました。この煙火大会で、長野市にもこんなに元気があることを、大げさに言えば見せつけることができたと感じています。
 善光寺御開帳や長野えびす講煙火大会に限らず、どうせやるなら中途半端なものでなく、徹底してやることで、お客様にも関係する皆様にも評価していただけることの大切さを思った1年でした。

 

光や産業振興で
一層の官民連携を

── お二人が現在、重点的に考えていらっしゃるテーマ、事業についてお話しください。

加藤
 観光については今後、それぞれ一つの地域で完結するのではなく、北信地域さらに広く長野県全体の魅力を売っていくことが大事です。ちょうど今年は、NHK大河ドラマ「真田丸」が放送されます。長野県の広い範囲で盛り上がりを見せる契機になると期待しています。
 もとより長野市には、松代という大きな宝があります。海津城、文武学校、宝物館、武家屋敷、寺町商家、大室古墳、松代地下壕など見どころが多く、今回「真田丸」に合わせて松代全体をパビリオンと位置づけ、まちのなかを見て歩くことができる体制を今整えています。同時に、地域の皆さんにもっと自分の地域を知っていただき、積極的に「おらがまち」を自慢してほしいと願っています。
 また、より広域な地域にも目を向け、たとえば新幹線延伸により沿線都市となった金沢市や富山市とも、官民合わせた交流を進めていきます。

北村
 市内には松代しかり戸隠しかり、魅力ある場所がたくさんあります。今回の善光寺御開帳でも、長野市とその周辺を回遊する観光も定着してきたように感じます。その流れは今後、より大きく広くしていくべきでしょう。
   一方、産業振興については、長野市と首都圏など離れた地域との交流はこれまでも行われてきましたが、近場の皆さんとの産業交流は薄かったような気がしています。今後、観光に限らず商工業についても、隣県や新幹線沿線の皆さんとの交流に力を入れていきます。ぜひ長野市のお力添えもいただきたいところです。
   また、長野商工会議所にも数多く加入されている小規模事業者の皆さんに向けた事業として、昨年4月から県より助成をいただき、広域専門指導員を県内に配置して、全方位的な支援を行っています。人材のマッチングと育成などについてお役に立ちたいと思っています。

加藤
 インバウンドでも官民の連携ができそうです。昨年1千340万人もの外国人が日本を訪れたものの、長野市の外国人宿泊者数は5万2千人弱ほどに留まっています。これを10万人に伸ばしたいところです。長野商工会議所にもご協力いただき、たとえばSNSなど新しい媒体の活用、標識や店舗などでの外国語表記などを進めていけたらと思っています。

 

口減少対策も
自分たちのまちの魅力発信から

── 人口減少問題も大きな課題ではないでしょうか。

加藤
 今、県外の大学へ進学した若者の4割しか長野市に戻っていません。これをまずは6割に逆転させたい。官民一体となって長野市内の事業所の職場環境の整備などを進め、「カムバック長野」を促します。市でも、人口減少対策ではなく人口増加施策に重きを置いた組織改革を進めます。

北村
 危機意識は必要ですが、それで後ろ向きな態度になっては意味がないですね。

加藤
 その通り。先ほどの「おらがまち」自慢ではありませんが、市内各地区がそれぞれ自分たちの地域に誇りと自信をもって、若者たちを積極的に呼び込んでほしいのです。大学生の親たちにも、子どもが卒業後長野に戻るよう促してもらいたい。

北村
 最近ワークライフバランスが叫ばれますが、暮らしを大切にするという意味では、働いている本人だけでなく、家族とりわけ子どもと一緒に地域の中をぜひ歩いて、自分の眼や耳で長野の良さを感じてもらいたいものです。
   なお、人の交流という意味では、アスリートとして活躍した人材を、国内外から長野に受け入れ、産業や地域の活性に一役買っていただく活動を今後積極的にやりたいと考えています。

加藤
 地域にとっての「他人」が入ることの意味はとても大きいのです。市が進めている長野市地域おこし協力隊も、産業振興や生活支援などで、まさに風を巻き起こしています。新年度からは、地域おこし協力隊のように地域に市職員を派遣し活動するアイディアも温めています。
 一方、中心市街地活性化もやはり重要で、権堂を中心としたまちづくりに、市も全面的に協力していくなかで、これに関連して県庁ー緑町線の2020年度の完成を目指します。

北村
 人口増加には、教育の果たす役割も大きいと考えます。経済界も今後は、家庭教育、職場教育を含めた地域教育に力を入れるべきです。そこで長野商工会議所では昨年、教育問題特別委員会を設置し、私たちが果たすべき役割について議論してきました。一方、学校教育に携わる先生には、もっと地域へ出ていただき、地域と関わりをもってほしいと思います。こうして学校教育と地域教育の接点が広がっていけば、長野市を誇りに思う大人と子どもが増えていくと期待しています。

 

皆で語ろう長野の人と魅力

── 最後に、今年の抱負をお聞かせください。

加藤
市民の皆様には新庁舎の工事で長らくご迷惑をお掛けしましたが、免震ゴムや工期延長などの問題があったものの、おかげさまで新年より仕事が始められます。これを機により一層の市民サービスに努めてまいります。芸術館は2階席の見えづらい座席の問題がありますが、5月にこけら落しを予定しており、文化芸術の普及にも力を注ぎます。
 今年の長野市のスローガンは、「カムバック長野」を促します。市でも、人口減少対策ではなく「見直そう、誇りを持とう、みんなで語ろう長野の人と魅力」です。人口増加策をはじめ、いろんなことに前向きに取り組んでいきます。

北村
 昨年は、善光寺御開帳や北陸新幹線延伸にまつわる観光関係には力を入れることはできましたが、地域の商と工の活性化については、行き届かない点が多々ありました。これを今年の課題にしたいと思っています。直接的な施策、間接的な施策合わせて、我々経済界だけではできないことは、行政の皆さんにもお願いして、ともに長野市の発展に寄与したいと思っています。

── 本日はお忙しいところ、ありがとうございました。

 


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