2015年12月号

View Point

後藤 孝氏(ごどう たかし)

自衛隊長野地方協力本部長 一等陸佐

昭和36年東京都生まれ。防衛大学卒業後、第35普通科連隊、富士学校、第13普通科連隊中隊長、防衛大学校、第8師団司令部、第40普通科連隊、西部方面総監部、幹部候補生学校、第4師団司令部などに就き、第13普通科連隊長兼松本駐屯地司令を経て平成27年4月より現職。

国民の皆様が自衛隊に寄せる信頼が
さらに安心へとつながるよう
広報活動に努めてまいります

 自衛隊長野地方協力本部は、長野市の本部のほか、県下に6つの地域事務所を設け、自衛官の採用や再就職支援、そして自衛隊の広報渉外業務を行っています。国民の皆様から自衛隊にお寄せいただいている信頼が、さらに安心へとつながるよう、我々は広い長野県を縦横無尽に奔走して、長野県や各市町村との連携を強化してまいります。

自衛隊の
「入口」「出口」「窓口」業務

── はじめに、自衛隊長野地方協力本部がどんな業務をされているかご紹介ください。

後藤
 長野地方協力本部は、陸海空自衛官と事務官の約80名で構成され、長野県における自衛隊の「入口」「出口」「窓口」業務をしています。
 「入口」業務とは、自衛官の募集業務です。これには、将来、陸海空で幹部となるべき幹部候補生、陸海空曹となる一般曹候補生(昔で言う下士官)、海空のパイロット候補生、そして自衛官候補生といった人材の募集・採用が含まれます。また、防衛大学校、防衛医科大学校、一般の高校に相当する陸上自衛隊高等工科学校(神奈川県横須賀市)の募集採用業務もしています。
 「出口」は、自衛官の再就職支援です。自衛隊では若年定年制をとっており、終身雇用でも50歳代の半ばで退職します。また、任期制隊員といって、2年ないし3年の任期を更新して任務にあたり、その任期を終了した20〜30歳代前半の隊員がいます。こうした人たちが再就職するお手伝いを通して、人材を地域に還元しています。
 「窓口」業務は、広報渉外業務です。災害時も含めた国民保護関連の調整業務もこれに含まれます。実際に災害が起こった場合は、長野県知事から松本駐屯地司令である第13普通科連隊長に災害派遣の要請を受けますが、その前段階の相談業務や自治体と駐屯地との橋渡しなどを行っています。

 

御嶽山噴火災害の捜索活動で
陣頭指揮を執る

── 昨年、御嶽山の噴火災害がありましたが、当時後藤本部長は、第13普通科連隊長として指揮を執られたとうかがいました。

後藤
 御嶽山の噴火は、昨年の9月27日でした。私は8月29日から9月28日まで、アメリカのワシントン州ヤキマ市で行われていた日米共同訓練「ライジングサンダー」に、第13普通科連隊の一部の隊員を連れて参加していました。
 御嶽山が噴火したとき、あちらでは真夜中でした。翌朝帰国する便に乗って、28日の夕刻に成田に到着し、そこから陸路を移動して、29日の午前1時過ぎに王滝村の指揮所に入りました。それまでの間は、残留部隊長である副連隊長に指揮を任せ、ヘリからあるいは地上からの避難活動などにあたらせました。私が指揮を執ったのは、すでに生存者が救出されたうえで、いまだ行方不明者が存在するという状況でした。
 日本における災害で、8月、9月に警戒すべきは、まず台風災害です。近年長野県では大きな台風災害はありませんが、平成18年には岡谷市で土石流災害が起きています。自衛隊では、連隊長が不在の折にも、後を預かる者がこうした災害に適切に対処できる体制は日ごろから整えています。。
 また、昨年は11月に神城断層地震があり、フォッサマグナの通る長野県でも大規模地震の発生が予想されます。さらに、南海トラフ地震が発生した際には、静岡県沿岸部に救援に行く任務が我々にありますが、こうした場面での準備も普段から綿密に進めています。
   さらに、9月1日の防災の日に行われた防災訓練やその前段階でも、県や市町村の方々との信頼関係も築けていましたので、私たちが渡米中に何が起こっても大丈夫だと思っていました。御嶽山が噴火するとは明確に想定していなかったものの、さまざまな災害に対して日ごろから入念な準備ができていたことが、あの災害時にもしっかりした対応につながりました。
 活動期間中、いちばん心配していたのは、再噴火と火山性ガスです。捜索救助活動を行う隊員の命に関わる問題ですので、その防護措置には万全を尽くしました。また、警察と消防の方も一緒に活動していますから、その皆さんの命も守りながら、それぞれの組織の能力を融合連携させ、どう任務を遂行するかに腐心しました。
 その後も、秋雨前線や台風18号、19号による大雨により火山灰が泥濘化し、捜索活動は困難を極めましたが、日ごろの厳しい訓練の成果もあり、またモラール維持のためのサポートもしっかり整えた甲斐あって、任務を遂行でき、隊員たちも異口同音に、国民県民のため働くことができたと話していました。ただし、6名の行方不明者を残して10月16日に捜索活動を終えたことは、非常に残念でなりませんでした。
 御嶽山での活動についても言えることですが、現場で隊員が力を発揮するには、自衛隊と自治体、警察、消防など関係機関との日ごろからの連携が大切であり、そこにおいて協力本部が果たすべき役割は大きいと考えます。

 

参道の広報ルームを
リニューアルしました

── 県民市民の皆さんへメッセージがありましたら頂戴できますか。

後藤
 ま国民の皆様の92%以上が、自衛隊の活動について信頼をいただいているという内閣府の調査結果があります。一方、私たちの活動の現場を実際にご覧いただく機会はなかなかありせん。初めにお話ししたように、我々の仕事は、わが国の国土国民を守るという崇高な任務を担う隊員に関するものです。これまでも協力本部と県内各地域事務所では広報活動に努めてきましたが、今後は国民の皆様からお寄せいただく信頼が、さらに安心へとつながるよう、活動に努めていきます。
 今年4月には、善光寺表参道にある私どもの広報ルームをリニューアルしました。
ソマリア沖での海賊対処活動、先の鬼怒川決壊の際の救助活動、御嶽山の再捜索活動などのパネル展示のほか、制服の試着コーナーもあり、以前より入りやすく分かりやすい施設になっています。御開帳の期間中には、お陰様で県内外からたくさんの方にお越しいただきました。県民市民の皆様には、ぜひお気軽にお立ち寄りください。  長野県は私にとって馴染み深い土地の一つで、私が初めてお世話になったのは、長野オリンピックがあったときでした。当時天候に悩まされながら、NAOCの皆さんと一緒に白馬八方尾根の男子滑降、スーパー大回転コースづくりや維持管理に携わったことを思い出します。  全国にある協力本部のなかでも、これほど面積が広く、自治体数が多い県を網羅するのは、この長野地方協力本部だけです。これからも県内を縦横無尽に奔走してまいりますので、皆様のご理解とご支援ご協力をお願いいたします。

 

後藤 孝さんの横顔
休暇には、奥様と日本二百名山巡りや、スキーを楽しむ。趣味は他にジョギング、歴史や経済に関する読書など。


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