2015年10月号

View Point

吉澤 猛氏

吉澤 猛氏(よしざわ たけし)

長野県観光部長

昭和33年生まれ。早稲田大学政経学部政治学科卒業後、昭和57年に長野県庁入庁。総務部市町村課長、社会部長寿福祉課長、上小地方事務所地域政策課長、商工労働部労働雇用課長、産業労働部産業労働参事兼産業政策課長などを経て、平成27年4月より現職。

長野県の観光に追い風が吹く今年度からを、
ホップ、ステップ、ジャンプの3年に

 今年の善光寺御開帳には、過去最高の707万人のお客様がお見えになり、その効果は県内他地域にも広がりました。今後、NHK大河ドラマ「真田丸」の放送や諏訪大社御柱祭、全国植樹祭など、長野県にとって追い風となるイベントが目白押しです。県では今年度3つの重点施策を実施しながら、滞在型観光地の形成やリピーターづくりに力を入れ、長野県の観光振興に努めていきます。

長野県の観光にとって
追い風が続く

── 長野県では今、どのような観光対策を実施されていますか。

吉澤
 観光は裾野の広い総合的な産業ですので、今後、地方創生を進めるうえでも非常に重要な位置づけになります。平成27年度の重点施策として、長野県では次の3つを進めています。
 1つ目は、「世界水準の山岳高原観光地づくり」の推進です。長野県は有数の山岳観光県です。県内には3,000メートル以上の山が15峰あり、その数は全国1位です。またスキー場の数は94で、こちらは全国2位です。この恵まれた環境を活かすべく、3つの地域を重点支援地域に指定しました。飯山市を中心とする信越9市町村、大町市・白馬村・小谷村、そして木曽町・王滝村です。本年度は、それぞれの地域で目指すべき姿を明確にするとともに、アウトドア・アクティビティの先進県として、県内事業者のネットワークを構築し、併せて情報発信体制の整備を図っていきます。また、山を安全に楽しんでいただくために、長野県登山安全条例(仮称)の年度内制定に向け、現在作業を進めています。
 2つ目は、「銀座NAGANO〜しあわせ信州シェアスペース〜」のさらなる充実です。当施設は昨年10月にオープンし、今年7月末には来場者が60万人を超え、非常に好調に推移しています。本年度は、県内市町村や民間企業の皆様のお力添えをいただきながら、販売商品の定期的な入れ替え、魅力的な商品の掘り起こしをします。また、首都圏在住者などを中心に、サポーターを募集して、商品等のモニタリングを行いながらコアな信州ファンを形成し、リピーターの獲得につなげます。さらに総合活動拠点として、観光だけでなく商品等のマーケティング活動や他県の施設にはないイベントスペース(2階)を活用した独自セミナーも開催します。
 3つ目は、国内外からの誘客・交流の推進です。信州の強みである「美しさと健康」「山岳高原」など、県内各地域の魅力を発掘・発信する「しあわせ信州観光キャンペーン」を実施して、周遊滞在型の観光を進めていきます。また、急増する訪日外国人旅行者を県内に積極的に誘致するため、東アジアや近年成長が著しい東南アジア等を主なターゲットとして、効果的な誘客活動を行います。
 今年は、3月に北陸新幹線(長野経由)が金沢まで延伸し、4月から5月にかけて善光寺御開帳がありました。来年1月にはNHK大河ドラマ「真田丸」の放送、5月の諏訪大社御柱祭、6月の全国植樹祭、再来年は7月から9月にかけてJRのデスティネーションキャンペーンが行われます。長野県にとって追い風となる大きなイベントが続くので、これを機に市町村や観光事業者と一体となり、今年よりホップ、ステップ、ジャンプの3年にしたいと考えています。

 

「ふるさと旅行券」登録施設を
募集しています

── 長野市とその周辺の観光について、どのようにご覧になり、今後どのような対策をお考えでしょうか。

吉澤
 今年の善光寺御開帳には、過去最高の707万7千7百人(前回比34万人、5%増)のお客様に来ていただきました。増加の要因には、ウェルカム長野2015実行委員会による「日本一の門前町大縁日」、回向柱のライトアップによる夜間の集客効果など、善光寺御開帳奉賛会の皆様や長野市をはじめ、官民一体となった取り組みの成果がありました。
 今年のゴールデンウィーク期間中の県内主な観光地の利用状況を見ても、507万5千人と前年比238万4千人、率にして88.6%の増加となりました。天候に恵まれたこともありますが、やはり、善光寺御開帳や北陸新幹線延伸の効果が大きかったと考えられます。それを裏付けるように、善光寺には前年の6倍の人が訪れ、戸隠高原、飯綱高原、松代などを訪れた人も前年比50%以上の大幅な増加となっています。また、今回長野市と松本市が連携したことで、松本城を中心とする地域も大いに賑わいました。
 今後もこの賑わいを維持するとともに、御開帳後の宿泊の減少に対応するため、県では国の地方創生交付金を活用した「信州サぁイコー!ふるさと旅行券」(宿泊用・体験用の2種)の本格販売を8月10日から開始しています。長野商工会議所の会員の皆様にも、ぜひ登録施設になって誘客増につなげていただければと思います。登録に関しては、信州・長野県観光協会までお問い合わせください。
 また、来年のNHK大河ドラマ「真田丸」の放送に合わせ、県は長野市、上田市ともに「真田丸広域連携プロジェクト」を構成しました。県内には、長野市松代地域をはじめとする真田氏ゆかりの地が数多くあります。プロジェクトでは、「真田丸」は信州が舞台であることを全国に発信して、県外から大勢のお客様の誘致を図ることを目指します。

 

広域連携で
新ゴールデンルートを構築

── 広域連携やインバウンドについてはどうお考えですか。

吉澤
 近年、観光客の行動範囲が、市町村の領域をはるかに超えて広がっていることから、観光に関しては広域的な対応をする必要があります。県内にはすでに、各広域圏単位などさまざまな形で20以上の広域観光推進組織が設置されており、それぞれの地域で取り組みがなされています。しかし現状では、パンフレットの発行などによる情報発信や誘客イベントの開催、キャンペーンの実施を行っている組織が多く、旅行商品の開発・販売や観光客の受入環境の整備まで行っている事例は多くありません。
 この点に関しては、国も観光の活性化を通じた地方創生を進めるため、専門性の高いマーケティングや戦略的な地域づくりの中核を担う観光組織として「日本版DMO(デスティネーション・マネジメント/マーケティング・オーガニゼーション)」を全国各地で育成していく方針を示しました。県としても、既存の広域的な観光組織をDMO化する支援策を進めるべきだと考えています。
 一方、人口減少による国内観光需要の減少等が進むなか、外国人旅行者の増加を図ることが観光振興上重要になっています。県としては今年度、「選ばれるNaganoへ〜3つの戦略〜」として、エリアを絞り込んだ誘客促進、インパクトのある情報発信、Wi-Fiの集中的整備など外国人受入環境の整備を進めています。訪日外国人旅行者は、東京─大阪─京都を巡るいわゆるゴールデンルートに集中しています。県では、北陸新幹線(長野経由)の沿線観光地と連携して、「新ゴールデンルート」を形成し、誘客につなげていきます。
 県では、平成29年度に観光地利用者数9,000万人、外国人宿泊者数50万人、観光消費額3,300億円を目標としています。
 その達成には、国内外に限らず多くのお客様にできるだけ長く滞在いただき、またリピーターになっていただくことが重要です。今後、「地域の日常」をありのままに楽しめる体験・交流プログラムの開発などにより、県民の皆さんと一緒になって「観光地域づくり」を進めていく考えです。

 

吉澤 猛さん 吉澤 猛さんの横顔
趣味は、旅をテーマにしたサスペンスドラマを観ること。競馬も推理を楽しんでおり、とくに長野県須坂市出身の北村宏司騎手を応援している。


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