2015年8月号

View Point

山岸 昭一郎氏

山岸 昭一郎氏(やまぎし しょういちろう)

長野商工会議所一般商業部会長
株式会社すぐじ代表取締役

昭和42年法政大学経営学科卒業後、昭和46年に株式会社すぐじを設立し代表取締役に就任。篠ノ井商工会議所青年部会長、平成13年より同副会頭、長野商工会議所と合併後は副支部長を歴任。他に、(一財)長野市勤労者共済会監事、行政の審議会委員、業界の各種役員なども務める。

十年一日の商売から脱し
経営者は自らの事業に
新しい価値を付加すべし

 小売業を中心に900事業所弱が所属する一般商業部会では、人口減少や少子高齢化など社会の変化にどう対応するかがいま課題となっています。そんな折、ながのプレミアム商品券が発売され、部会員には大きな商機となりました。ぜひ有効に活用してもらいたいものです。また、十年一日の商売では先が見えない時代ですから、自らの事業に新しい価値を付け加えていくことが大切です。

部会員はプレミアム商品券の有効活用を

── 一般商業部会の取り組みについて教えてください。

山岸
 一般商業部会には、長野商工会議所の会員約5、800事業所のうち900事業所弱が属しています。業種としては小売・卸が主です。日本商工会議所は部会活動を活発化せよと指導するものの、小売業にもいろんな業態があり、共通の話題をもって活動することの難しさを感じています。
 とはいえ北陸新幹線開業により、長野市を取り巻く環境も変わりましたし、また少子高齢化等社会の変化に応じた商業のあり方を模索していかねばなりません。長野商工会議所では今、消費者の購買意欲喚起と地域経済活性化を目的に、ながのプレミアム商品券事業を実施しています。すでに総額24億円(うちプレミアム分4億円)の商品券が発売され、登録店での買い物にご利用いただいています。一般商業部会員にとってこれは恰好の商機ですから、より多くのお客様にこの商品券で買い物を楽しんでいただくように、各店が独自のサービスを付加するなど、ぜひ有効に活用してほしいと願っています。
 当部会にとって接客の向上も課題です。小売業であれば業態によらず必要なことですから、従業員の資質向上とおもてなし接客対応の推進にも取り組みます。
具体的には、長野おもてなし推進ネットワークや他の委員会、部会などと連携し、おもてなし力向上のための取り組みや情報を共有するとともに、販売・接客マナー向上に役立つセミナー、講演会なども開催します。
 ちなみに昨年は、浜松市の輸入車ディーラーでイタリア車を日本一販売した高塚苑美さんのお話を伺いました。メトロポリタン長野で催したこの講演会には、皆さんとても関心があったようで、200数十名の人が集まりました。部会活動で講演会やセミナーを企画する際は、部会員が何で悩んでいるかに焦点を当てることが大切だと感じました。
 ほかにも、周辺地域と連携、協働することで従来の商圏の外から人を呼び込んだり、物産展や展示会を企画して商圏の外へ売っていく取り組みも検討しています。

昨日と同じ商売をやっていては先が見えない

── 一般商業部会の皆さんは、いまどんなことでいちばんお悩みなのでしょう。

山岸

 たとえば、人口減少や人口構成の変化等にどう対応すべきかといった問題です。総務省が発表した外国人を含む日本の総人口は、4年連続のマイナスでピーク時の2008年から約100万人減りました。また、私の娘が生まれた昭和48年には、同学年に180万人いましたが、昨年生まれた子どもは100万人です。
 人口減少は長野県も含めた地方において顕著で、今後長野市でさえ現在38万人の人口が、2040年には30万人になると言われています。また出生率の減少は日本の人口構成を変え、若年層を相手にした商売は先細っていきます。昭和の時代は、昨日と同じことをやっていても売上が伸びました。平成のいま、昨日と同じことをしていたら売上が減ります。
 成長時代を経験してきた人の多くが、右肩上がりを常識だと思い込んでいます。しかし、人口の減少に伴い市場が小さくなるのは必然です。経営者はこれをただ嘆くのではなく、自分の頭を切り換えていかなくてはいけません。これまでの商売に何かを付け加え、多角化や複合化を図っていく必要があります。ところが現実には自分がどうすべきか分からない経営者が多いわけです。
 インターネットの普及にあわせ、消費者はいつでもどこからでも買い物をすることが可能になりました。このようなマルチチャネル化(オムニチャネル化)に素早く対応していかなければなりませんが、事業者一人ひとりは、実のところ何をやったらいいのか分からない。年配の経営者が多いことも大きな理由でしょう。部会としても、ITを活用してどうしたら売上を伸ばせるか、お客様を自社のホームページへ惹きつける方法など、より具体的実践的な仕組みを提案する勉強会が必要だと感じています。
 また、当部会ではこの7月に岡山市へ視察に行き、岡山イオン出店後の影響や地元商店街の対応などについて学んできました。物販に携わる場合、私たち商店が仕入と販売の量で大型店と勝負するのは到底無理です。そんなとき、すでに出来上がった製品を売るだけでなく、たとえば自分のところでひと手間掛けた品を販売するといった具合に、二次産業と三次産業を一体化させた分野を模索していく必要もあるかもしれません。

提案が自然と生まれる職場づくりも必要

── ご商売の書店業ではどんな取り組みをなさっていますか。

山岸

 いまインターネットを利用した古書販売に力を入れています。新刊書は日本中どこへ行っても同じ値段一物一価ですが、古書の場合一冊一冊状態が違いその希少性が異なりますから、状態がよく希少なものは高く販売できます。
 書店業も現在たいへん厳しい状況にあります。日本における本の売上はピーク時(1996年)で2兆6千億円ほどありましたが、昨年は1兆6千億円くらいです。しかもその売上の多くをアマゾンとコンビニが占めます。県内の書店組合加盟店は、ピーク時に200店あったのが74店に減少しました。老舗書店も県内あちらこちらで倒産しており、次はどこだと噂されます。それがこの業界の現状です。それでも新刊の販売で生き残るつもりなら、外商に力を入れる手もありますが、外商向きの単価のよい商品が少ないのが悩みです。
 先に触れた人口減少や人口構成の変化も私たちの商売に大きく影響しています。加えて、子どもたちが本を読まなくなったことが一層深刻な問題です。大学生の4割は全く本を読まず、中高生は一日2時間もスマホをコミュニケーションに使っており、本と関わる時間がありません。ただでさえ少ない若年層が本に接する機会が圧倒的に少なくなっているわけです。かつてたくさん発行されていた子ども向け学習雑誌も軒並み廃刊に追い込まれました。教科書や学習教材がデジタル化される動きもあり、若年層に向けた本の需要はますます減っています。
 やはり書店の商売も昨年と同じことをしていたのでは駄目なのです。何か工夫して自分の商売に新しいものを付け加えていかないといけません。その一環として昨年秋から始めたのがインターネットを利用した古書の販売です。事業として独り立ちするにはまだ至っていませんが、今後在庫を増やしていけば可能性のある分野だと感じています。
 これからも新しい価値を付加するため、従業員とも情報を共有しながら、社内から提案やアイデアが自発的に生まれる職場づくりにも努めていきたいと思います。

 

山岸 昭一郎氏 山岸 昭一郎さんの横顔
「毎日勉強、毎日挑戦」が信条で、自らにこれを言い聞かせながら、常に事業とその周辺に関わる情報の収集に努めている。


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