2015年7月号

View Point

三石 正俊氏

三石 正俊氏(みついし まさとし)

長野商工会議所情報文化部会長
株式会社長野放送代表取締役専務

昭和24年佐久市生まれ。上智大学文学部新聞学科卒業後、昭和47年に信濃毎日新聞社入社。編集局報道部、総務局労務部長を経て、平成9年(財)長野オリンピック冬季競技大会組織委員会に出向。その後、編集局次長兼東京支社報道部長、メディア開発局長、取締役東京支社長、同メディア局長を歴任。信濃毎日新聞社を退社後、平成23年にインフォメーション・ネットワーク・コミュニティ(長野ケーブルテレビ)代表取締役社長。平成26年より現職。

メディアが多様化した今
情報をいかに正しく伝えるかは
地方企業にとっても大きな課題です

 情報文化部会では、今年度「広報とリスク管理」と題したセミナーを開催します。メディアが多様化し、情報の扱い方に関して企業を取り巻く環境が大きく変化している今、適切な情報を正しく伝える手法を学ぶ貴重な機会となるはずです。一方、メディア側にいる立場として、私どもは視聴者から寄せられる信頼に応えながら、番組を通じて地域の振興にも関わっていきたいと考えます。

「広報とリスク管理」のセミナーを開催予定

── はじめに情報文化部会の活動について教えてください。

三石
 当部会は、テレビ、新聞、広告、IT通信、印刷といった皆さんで構成されています。環境変化の非常に激しい業界ですから、これにどう対応すべきかが大きなテーマになります。
 情報通信の今を知るための視察も、活動の柱のひとつです。昨年12月には1泊2日で、NTT東日本ネットワークオペレーションセンタ、大宮アルディージャ施設、NTT情報ネットワーク総合研究所を見学しました。地域から全国へ、さらにグローバルに展開する通信インフラの安全確保やセキュリティについて、事業者がいかに苦慮されているか目の当たりにしてきました。
 長野県では昨年、南木曽町の土石流、御嶽山噴火、長野県神城断層地震など災害が相次ぎました。こうした折々にライフラインとしての情報インフラの重要性を私たちは再認識します。ですから昨年の視察は、情報インフラの敷設や保守を担う業務の責務の重さとご苦労をより強く感じる機会となりました。
 今年度は、「広報とリスク管理」と題したセミナーの開催を予定しています。企業にとって予期せぬ事件や事故等が起きたとき、メディア対応の仕方によっては誤解を招くこともあり、万一そうした事態になった場合、これをリカバーするには多大なエネルギーとコストがかかります。また、取材される側にミスリードがあれば、やはり不幸な結果を招きます。そこで、適切な情報を正しく伝えるためにどんな方法があるのか、セミナーでは専門家を招き説明していただこうと考えています。

 

正しい情報を信用あるメディアに提供すべき

── 情報の扱い方に関し、企業を取り巻く環境が近年大きく変化しているように感じます。

三石

 はい。まず、世間一般からの視線が、かつてより厳しくなっているようです。加えてメディアの多様化があります。ネットでは不正確な情報が発信され、信用度の低い情報が流布することのリスクも高まっています。カメラ、レコーダー、スマートフォンを手にした人は街中に溢れ、故意か無意識かは別として、確証のない情報が独り歩きする時代に我々はいます。
 地方企業もそうした環境変化ともはや無縁ではいられません。外に向かって広報する際、どんな情報をどの程度出すべきなのか、頭を悩ませる場面があるかと思います。そこで対応を失敗すると、「情報を隠している」「嘘をついている」等思わぬ評価に晒され、せっかく広報したのに、メディアや世間の心証を悪くするかもしれません。また、不祥事があったとき、経営陣が記者会見で頭を下げる場面をよくマスコミで目にしますが、ああいう対応はどんなときにふさわしいのでしょうか。セミナーでは、こうしたことも個別具体的な事例も入れながら学べたらと考えています。
 正しい情報を持っているのは当事者です。情報に関するリスク管理において何より重要なことは、当事者が正しい情報を信用力のあるメディアに提供することです。メディア側も当事者からもたらされた情報を冷静に正確に伝えるべきで、今回のセミナーは、情報発信者とメディアとの接点としても貴重な場になると思います。

テレビが有用性ある存在であり続けるために

── メディア側のお立場として、今の情報業界の進化・変化についてどうお考えですか。

三石

 既存メディアと新しいメディアの融合が進むなど、業界自体が激しく変化しています。かつては、テレビドラマをネットに流すなど考えられませんでしたが、今は制作した局側が積極的に配信しています。
 一方、YouTubeのような動画配信、LINEをはじめとするSNS等新しいサービスが続々と登場していますが、既存メディアである地上波テレビは、同時性、速報性、信頼度という強みを保持しています。テレビは、まだまだ視聴者の皆様にとってメインのメディアとしてあり続けます。
 たとえば、私どもは報道やドラマ、バラエティ等の番組のみならずCMについても、放送倫理の観点から、コンテンツの公共性を厳しく吟味します。こうした過程を経てこそ、視聴者にとって有用で信頼できる情報を提供できているわけです。自分で情報を取りに行くネット検索はなるほど便利です。しかし、得られた情報には不正確なものや流言も混じり、キーワードの入れ方でヒットする情報が偏る可能性もあります。対して、既存メディアの情報は確度が高く、自ら求めた情報の周辺で思いもよらぬ拾いものをすることさえあります。
 また、私たちは地方テレビ局として、地域振興に関わっていきたいとの想いもあります。当社で今年4月から始めた「NBS週刊ながのスポーツ!」は、プロのみならず中高生やマイナーのスポーツシーンも積極的に取り上げています。皆様がすでにご指摘の通り、スポーツは経済にプラスの効果を及ぼすばかりか、地域や人を明るく元気にします。情報を正確に伝えることもメディアの社会的責任ですが、番組を通じ地域を盛り上げ、あるいは若者の育成の支えとなることも責務だと考えます。

 

ホスピタリティこそ長野五輪の最大の実り

── 部会に限らず長野商工会議所活動を通じて、お感じになったことはありますか。

三石

 長野商工会議所はなんと幅広くきめ細かく地域振興に尽力しているか知ることができました。誰かが言い出して、実際に行動を起こさないと地域はよくなりません。そのようなとき長野商工会議所は、進んでその役割を果たしてきました。
 先の善光寺御開帳では、奉賛会の一員として紋付き羽織袴を身に着け参道を歩きました。7年に一度の盛儀を皆で盛り上げようと、その先頭に立ってきた長野商工会議所の役割の重さも身にまとった気分でした。
 とはいえ、こうした活動が支障なくできるのは、この地域では地元を盛り上げようとの意欲が高く、長野市がコミュニティづくりの先進地だからではないでしょうか。それが育ったのは長野五輪のときです。当時、組織委員会でメディアサービスを担当していた私は、ボランティアの皆さんが知恵を出し合い協力しながら、ホスピタリティを醸成させていったのを肌で感じました。長野五輪があったからこそ、その後のイベントでも市民一人ひとりが、「自分なりにできることがある」と前向きに考えられるようになり、そんな個々が手を取り合って、長野らしいホスピタリティを発揮できているのです。これが、長野五輪がもたらしたいちばん大きな実りだったと私は思っています。

 

三石 正俊氏 三石 正俊さんの横顔
趣味は56歳から始めたゴルフ。その魅力は、自己責任と感情のコントロールにあると語る。生家の畑で趣味の野菜作りにも親しむ。


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