2014年12月号

View Point

内田 浩二氏内田 浩二(うちだ こうじ)

東日本旅客鉄道株式会社執行役員長野支社長

昭和30年生まれ。東京都出身。東京大学工学部卒業後、昭和55年日本国有鉄道に入社。国鉄時代より民営化後も長く在来線、新幹線の線路や設備の保守に携 わる。平成17年に安全対策部次長、平成19年に東京支社施設部長、平成22年に鉄道事業本部設備部長を経て、平成25年より現職。

北陸新幹線の開業を機に
信州各地の魅力とその玄関口である
長野を全国に積極的に発信します

 来春の北陸新幹線の開業で、信州と北陸、首都圏と北陸の時間的距離が短くなると、観光とビジネス両面で、さまざまなチャンスが生まれることでしょう。観 光においては、信州全体の観光、さらに県境を越えた周遊観光を視野に入れて、長野をその玄関口とすることが大事です。弊社でも、信州各地の魅力を全国へ発 信し、長野へ人を呼び込む商品を積極的に打ち出していきます。

新幹線延伸は長野の観光・ビジネスにも好機

── 来春、北陸新幹線が開通します。その目的とするところや効果についてお聞かせください。

内田 そもそも北陸新幹線を含む整備新幹線は、全国新幹線鉄道整備法に基づく昭和48年の整備計画によりつくられることが定められました。新幹線鉄道を活用して、経済の発展や生活領域の拡大、地域の振興を図ることが、その大きな目的となっています。
 難しい法律論はさておき、今回長野から金沢まで新幹線が延伸されることで、さまざまな効果が期待できます。たとえば、現在、上越新幹線を使って越後湯沢 で乗り換えた場合、東京─金沢間の移動は3時間40~50分要しますが、北陸新幹線の開業によりこれが最速で2時間28分になります。また、長野から金沢 へ行くのも、これまで直江津経由で3時間半程度掛かっていたものが、1時間強に短縮されるはずです。つまり、首都圏からも長野県からも、時間的に北陸が近 くなるという効果が、まず挙げられます。
 時間的距離が近くなれば、観光もビジネスも活性化します。新幹線の開通で、首都圏から北陸へ、逆に北陸 から首都圏へ観光で訪れる人も増えるでしょう。ビジネスにおいては、これまで金沢など北陸地方は、関西との結びつきが強かったわけですが、今後は首都圏と の間にもビジネスチャンスが広がることが予想されます。
 延伸で長野が通過駅になることを過度に心配する必要はないと思います。これまで東京─長野間の運行本数は27往復でしたが、延伸後は長野駅の停車本数が40本とおよそ1.5倍になり、これに長野─金沢間も1往復加わります。北陸新幹線開通は、長野の観光やビジネスのチャンスも広げるのではないでしょうか。

長野駅を信州の周遊観光の玄関口に

── 新幹線延伸後の長野の観光戦略について、どのようにお考えでしょうか。

内田 先ほど申し上げた通り、現在首都圏から北陸に行く場合に、越後湯沢を経由していたものが、新幹線ができることで長野を通ります。ですから、いかに長野に降りていただくかが大事になります。
 北陸新幹線が開業する4月には、善光寺御開帳もありますし、周辺には戸隠、小布施、志賀、山ノ内など、魅力ある観光地がたくさんあります。JR東日本と しましても、長野市をはじめ地元の皆さんと連携して、その魅力を発信したり、あるいは種々の魅力を盛り込んだ商品等を開発したりしていきたいと考えます。
 その際、長野地域だけでなく、長野駅を玄関口として信州全体に、あるいは信州を通って他県にまで観光客を誘うことが大切になります。た とえば、新幹線で東京と金沢を直線的に行き来するだけでなく、長野駅で降りていただいたら、そこから松本、上高地を観光し、さらに高山へ抜けて、白川郷や 五箇山を巡り、富山や金沢へ至るルートが考えられます。その逆ルートも同様にあり得ます。首都圏の人にも北陸の人にも、きっと魅力を感じてもらえるルート です。
 北陸が近くなることで、県域を越えてこうした周遊観光も可能になるわけで、弊社でもすでに、アルピコ交通や濃飛乗合自動車にご協力いただき、松本─高山 間でびゅうバスを運行しています。高山から北陸にかけては、JR西日本でも幾つかの観光ルートを設定しています。新幹線の開通でこれらがうまく繋がると、 周遊観光の需要は今より高まるでしょう。さらに、立山黒部アルペンルートのような、非常に大きな観光資源も周遊ルートに取り込むことで、より魅力的な商品 になるはずです。
 飯山駅の開業も、長野県の観光にとって好材料でしょう。飯山を中心として、飯山線沿線の野沢温泉や戸狩等のスキー場を絡めた商品もつくることができます。斑尾や黒姫、妙高も近くなりますから、飯山からそちらへ足をのばせるような商品も試みてみたいですね。
 現在でも飯山線においては、飯山市のご協力のもと、休日に走る「農家レストラン」と銘打ち、車内にて地元食材を使用した料理をご提供する企画をしていま す。さらに春からは、今の車両を改造して、田舎の農家をイメージしたコンセプト車両を走らせる予定です。今後、十日町など新潟の皆さんとも連携しながら、 飯山線沿線や上越地域にかけて活性化を図っていきます。
 他にも、上田でしたら2016年放映予定のNHK大河ドラマ「真田丸」で話題性がありますし、佐久平なら小海線も絡めた観光コースの設定も面白いと思い ます。小海線で小淵沢まで出て、中央本線で諏訪も訪ねれば、八ヶ岳をぐるりと巡り、高原や湖や温泉を観光客に楽しんでいただけます。
 長野から白馬まで定期的に運行している「リゾートビューふるさと」も、大糸線をはじめ沿線の皆様の心温まるおもてなしで好評を博しています。姨捨の「ナイトビュー」も同様にたいへん人気です。
 こうした信州各地の魅力と新幹線をいかに繋げていくかが弊社にとっても課題であり、たくさんの方に訪れていただけるよう努力してまいります。
 長野にも北陸にない魅力はたくさんあるわけで、先ほども申し上げた通り、悲観する必要はありません。たとえば、雪質に優れたスキー場や軽井沢のような高原リゾートも、北陸の人に向けて格好のPR材料になります。今回の北陸新幹線開業は、長野駅を信州観光の玄関口にするチャンスであると、ぜひ前向きにお考えください。

長野駅に来ることが目的になるような施設に

── その長野駅も新幹線の開業に併せリニューアルします。新しい駅の紹介をお願いします。

内田 現在長野駅をご利用いただいているお客様には、工事によりご不便とご迷惑をお掛けし、たいへん申し訳なく思っております。
 間もなく長野駅はまさに信州観光の玄関口にふさわしい姿に生まれ変わります。まず今回3階建てとなる駅ビルは、長野市のご協力を得て、長野の歴史と伝統を現代的に表現した大きな庇と列柱を備え、人が集まりやすい空間になります。駅ビル自体にもコミュニティースペースを設けます。
 駅ビルの経営自体はMIDORIが行いますが、テナントには、東急ハンズ等今まで長野になかったお店も出店します。地元のお店も含め、ショッピングはより楽しくなるでしょう。長野市内からも市外からも、駅に来ることが目的になるような駅にしていきたいと思います。
 また、現在のMIDORI、ホテルメトロポリタン長野へは、新駅ビルから中を通って行けるようになります。かねて懸案だったペデストリアルデッキとの連 絡通路についても、今回デッキから直接駅ビルの中へ入ることができるようになります。長野市の観光案内所はスペースを広げベックスコーヒーと一体化しま す。いろいろな意味で、利用者の皆様にとって便利な駅になるでしょう。
 最後になりましたが、弊社のいちばんの使命は、決められた日までに、間違いなく安全に新幹線を準備し、開業後はきちんと運行することにあります。日頃皆様にお寄せいただいている新幹線への信頼に応えるためにも、安全で快適な新幹線を走らせます。

内田 浩二さんの横顔
子どもの頃から自然に親しみ、学生時代は北アルプスによく登られたとか。今も休日に近郊の山へ行くことも。また、長野へ来たのを機にそばの食べ歩きも楽しみたいと話す。

 


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